テニス部には不思議なカップルが存在する。

 部長の手塚国光と、マネージャーのである。

 容姿端麗、成績優秀な二人だから付き合っていることがばれた当初から話題だったけれど…

 部活時の二人の会話には何度も驚かされている部員たちが存在する。














 「……」


 「机の横に置いてあります。


 「そうか。」



 朝からこんな会話で練習がスタートする。

 手塚が手に取ったのは机の上においてある日誌。

 ぱらぱらとめくって中身を確認すると、もとあった場所において練習に参加する。

 その間には練習が終わった後のために飲み物とタオルを準備する。


 …そこだけ見れば他の部活と変わらないのだが…







 「!」


 「はい、準備できました。


 テニスのボールが山積みになっていた。



 「…………」


 「はい、どうぞ。


 手塚に渡されたのは大量の資料と、チェックを入れるためのペン。



 「……」


 「洗濯物なら右においてあるかごに入れてください。」




 「……今日は……」


 「雨が降る心配はありませんから、予定通り部活を進めてください。





















 会話にならずに会話が成立している。

 大石・菊丸の黄金ペアにも負けない阿吽の呼吸である。



 「なかなかやるね…あの二人。」


 「あんな短い言葉で会話が成立してるもんね。」


 「しっかし、手塚部長、あれでいいんスかねぇ?」


 「さぁ。」


 「でも面白いっスよねぇ。俺らのときはちゃんと最後まで言葉を聞いてから返事するさんなのにさ。」


 「手塚のときは名前呼ばれただけで何が言いたいのか理解しちゃってるもんね。」


 
 …つまりそういうわけなのである。






































 「………」


 部活も終わって日も落ちたころ、最後まで部室の点検などを行っていた手塚が部室で日誌を書いているを呼んだ。


 「なに?」


 日誌をパタンと閉じて振り返った少女は、少しお疲れの様子だった。

 珍しく会話が成立しなかったな、と思いながら手塚はの隣に腰掛けた。


 「来週の練習試合のことなのだが…」


 「どこでしたっけ?」


 「……不動峰だ。」


 「ああ……そういえばそんな話がありましたね。資料は作ってありますし、その日の準備のほうも大丈夫ですよ。うちの部員は乾君がいろいろデータを集めているから大丈夫でしょう?」


 「ああ。」


 そういってからは微笑んだ。


 「何怖い顔してるの?」


 「別に…」


 「…わかった。私が何で手塚の言いたいことがわかるか、気になるんでしょう?」


 「…………」


 だってね、と、が笑った。

 手塚の頬が朱色に染まったように見えた。


 「手塚、もともとしゃべらないじゃない。だから、言いたいことがあるときって声のトーンでわかるのよ。」


 「声?」


 「そうよ。大きな声で私を呼んだときは大体準備ができたのかって言いたいんじゃない?逆に、適当に呼んだときは日誌とか、些細なことで呼び止めたって感じ…かな。」


 そこまで詳しくわかるのだろうか…と疑問を持った手塚だったが深く追求はしなかった。


 「なるほど。」


 「でもね、わからないときもあるのよ。」


 困ったように彼女が微笑んだ。


 「部活のときは部活のことしか考えてないんでしょう?だからわかるけど……部活じゃないときはよくわからないわ。」


 ふふふっ、と、彼女はいたずらっぽく笑っていた。

 そして、手塚の肩にもたれかかる。

 手塚の手がの手に触れた。


 「…あ、でも…って呼ばれるときは大体わかるかな…」


 そういわれたから、手塚はなんとなく普段とは違う呼び方で呼んでみた。


 「


 驚いて顔を上げた彼女は微笑んだ。


 「…そんな風に呼ばれたのは初めてだわ。」


 「そうか。」


 「研究しなくちゃならないわ…そんな風に私のことを呼ぶときは何を要求してるのか……」


 くすくす笑って、手塚と重なった手をそっと握った。


 「そのうちわかるだろう…?」


 「……さあ、どうかしら。」


 それから彼女は手塚の耳元でささやいた。


 「…手塚が私のことを名前で呼ぶなら、私も呼んであげる……国光って……」



















































 翌日の部活は普段と違った部活になった。


 「


 「雨が降りそうですから早めに部活を切り上げたほうがいいですよ。」





 「


 「一番左が国光の着替え。」





 「


 「あせんなくても、机の上においてあるわ。」

















 「あれ、あの二人、名前で呼び合うようになったんだ。」


 「進歩したじゃん。」


 「やるなぁ、手塚部長。」























































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 手塚ってあんまりしゃべらないんだもん(爆)
 手塚が饒舌なのもあんまり好ましくないけど…
 もうちょっとしゃべってもいいかなあって思うな……








































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