美術室の窓から、スケッチブックを手に外を眺める少女。
気になって仕方なかったのです。
よく、スケッチブックを落としそうになりながら、懸命に絵を描くその姿。
あんなに高いところにある教室から見た景色を描いているのかと思いました。
でも…違ったみたいですね。
放課後、部活に向かおうと荷物を準備していた僕を、呼ぶ人がいた。
髪の長いすらっとした女性で、スケッチブックと画材を手にしていた。
この学校にはたくさんの生徒がいるから、僕だってひとりひとりをいちいち覚えているわけではない。
見覚えのない…おとなしそうな子だった。
「…僕に何か用ですか?」
「あ、はい。あの……テニス部の方ですよね?」
きれいな声で、少し緊張気味に話す少女。
「…私、美術部の三年、っていいます。…今度、美術のコンクールがあるんですが…それに出す絵を描かせていただきたいんです。」
「………?」
「えっと…テニスをしている姿を絵にしたいんで、もしよろしければ見学させてください。」
…なるほど、そういうことか。
「…いいですよ。その代わり練習の邪魔にならないところにいてくださいね。」
「あ、ありがとうございます!」
深々と頭を下げられた。
なんとなく…不思議な気分になった。
「…?」
「ああ、いえ何でも……コートまで案内しますよ。」
僕は荷物をまとめてもって彼女とともにテニスコートに向かって歩き出した。
「…!…」
彼女と僕が部室に入ると、何人かの部員が目を丸くして僕たちを見た。
「…?」
「……観月が彼女連れてきた……」
「…しかも、ミスルドルフじゃん……」
ささやき声が聞こえた。
「……違いますよ。さんは部活を見学しにきたんです。」
「ええ。テニス部の絵を描こうと思って。」
数人の部員の顔が紅くなった。
「ほら、何してるんですか。今日の練習メニューはもう知らせてあるはずです。早く取り組んでください。」
パンパン、と手をたたいて、部員を練習に出す。
それから外のベンチにさんを連れて行く。
「ここでいいですか?」
「ええ、ありがとうございます。」
「たまに球が飛んでくることがありますから注意してくださいね。」
「はい。」
一日、普段となんら変わりのない練習。
ちょうど日差しが強くて、みんな汗をかいていた。
でも、普段と変わらない。
ベンチに座って一心に絵を描いている彼女を除いては。
部員たちの気が散っていた。
おまけで僕が声を張り上げる羽目になった。
ミスルドルフ……そういえば、美人コンテストかなんかをやったことがありましたね。
興味がなかったんで、あまり覚えていないのですが…
そう…彼女が選ばれた人なんですか。
確かにきれいな顔立ちをしていますね。声も透き通るようですし…
「…おい、観月。終わったぞ?」
「え?あ、ああ。はい。お疲れ様でした。」
なんとなく今日は、僕もぼーっとしてしまっていけませんね。
日が落ちるころに、部活は終わった。
彼女も画材を片付けて、スケッチブックを閉じるところだった。
「…うちの部員で、お役に立てましたか?」
「ええ、とっても。なかなか面白い絵が描けましたよ。」
…彼女の笑顔に…顔が赤くなるのを感じた。
なんとなく、体が火照っている。
もう日が落ちて、肌寒いくらいの気温だというのに。
「今日はありがとうございました。無理いっちゃって……」
「いいえ。別にこれくらいだったら…」
ふふふ、と、彼女は微笑んで、スケッチブックの中から一枚紙を取り出した。
「?」
「…これ、観月さんに差し上げますね。私の描いた絵なんで、そんなに上手くもないんですけど。」
そっと握らされた絵。
それじゃあ、といって笑顔で帰宅していく少女。
僕も彼女に挨拶をして。
それから、絵を見てみた。
………これは……
…そう…こんな絵を描いてたんですね。真剣になって。
てっきり部員たちの姿を描いているものかと思っていたら……
スケッチブックの切れ端には、みんなに指示を出す僕の姿。
まるで鏡に映してあるかのようにそっくりだった。
そして、その横に添えてある言葉。
『晴れている日のあなたは輝いています。まぶしいけれどずっと見つめていたくなる輝きを放っています。』
……気になった。
彼女のことが気になった。
…いったいこの文の意味はどういうことなのか。
それは、うれしいほうにとっていいのか、それともただつづっただけなのか…
でも…
真意を確かめるには少し時間がかかりそうです。
あなたはきっと、明日も部活にやってきて絵を描くことでしょう。
あなたのことも、僕のデータに加えておきましょう。
あなたのことをしっかりと観察してから…この言葉の真意をつかみましょうか……
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観月とはおとなしい女の子の恋希望(爆)
この二人…続き書くのも楽しいかもしれないなぁ……
ちょっと検討してみようかな。
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