「…メロンパンが食べたい…」


 海堂の隣に座って昼食を食べていたはそういった。

 けれども、が食べているのはコンビニで売っている袋詰めのメロンパン

 少しずつ口に運びながらそういっている。


 「…もう食べてるじゃねーか……


 少し呆れた表情で、海堂が弁当箱を閉じながらそういった。


 「だってこれ…メロンパンだけどメロンパンじゃないわ。」


 ……

 一瞬、彼女が何が言いたいのかわからなくて頭が痛んだ。


 「この前ね、駅前に新しくできたパン屋さんに行ってきたの。そしたら焼きたてメロンパンを売ってたのよ!その場で焼きあがったのをくれるの。一個120円でお手ごろだし。」


 そこの焼き立てメロンパンに比べたら、今食べているのはぽそぽそしておいしくない、と彼女は不満顔だった。


 そういえば…ふと、海堂は思った。

 今、自分の隣にいるやつは、時々何かを無性にほしがることがある…と。

 ついこの間はおいしいシュークリームが食べたい…と。

 その前は、冷たいソフトクリームがいい。

 その前は……


 「これくらいの大きさなんだけど、本当においしかったのよ。」


 笑顔でそういわれる。

 すらっとした身長のは顔も整っていて、校内でうわさの美人だ。

 別に付き合っているわけでもないが、なぜか一緒にいることが多い。



 「…………駅前……?」


 「そ。新しくできたのよ。晴れてる日には外で焼きたてパンを売ってるからすぐにわかるわ。」


 笑顔で。

 海堂の顔が少し紅く染まった。







 が笑顔でメロンパンの話をしていると、すぐに昼休みが来てしまった。

 海堂は昼練があるから、といってテニスコートに向かった。


 「行ってらっしゃい。」


 いつも彼女は笑顔で手を振る。

 自分には恥ずかしくてできないから、首をすくっと動かして挨拶するだけ。

 愛想の悪い自分に腹が立つが、それでも彼女はなぜか自分と一緒にいる。

 友達の中には、に思いを寄せるやつが多いというのに。


















































 なんとなく、昼食を食べるのは雨の日以外は屋上…ということになっている。

 それは二人の間でなんとなく決まったことだ。

 そして、なんとなく、屋上で顔を合わせると二人で座って食事をするようになった。





 翌日は屋上は殺風景だった。

 天気は曇り。

 こんな日に屋上で食事をする人などいない。

 自分と、の二人だけが屋上の隅のほうにいた。





 海堂の手には、いつもの弁当箱と、もうひとつ、紙袋が。

 の手にはどこかのコンビニの袋。





 お互いの姿を見つけた二人は座って食事を取り始める。








 「…これ。」


 「……?」


 「…やる。」


 乱暴に押し付けた紙袋。


 「…なに?開けてもいい?」


 うなずいた。

 は丁寧に袋を開いた。

 中身を見たとたん、笑顔になる。

 焼き立てとはいかないまでも香ばしいメロンパンの香り。

 自分のコンビニの袋を取り落として喜んだ。


 「いいの?いいの?」


 無邪気にはしゃいだ。


 「うわぁ……」


 ひとつ取り出して、半分に割く。

 半分を海堂に渡して微笑んだ。


 「本当にいいの?ありがとう。はい、半分こ。」


 受け取ったメロンパンはいい香りを放っていた。

 おいしそうに食べるの…その笑顔がなんとなくまぶしかった。



 「でも、これどうしたの?」


 「…今朝、買って来た。」


 「……朝からやってたんだ、あのお店……」


 じゃあ、今度は焼きたて食べに行かない?

 そう、言われた。

 一緒に。

 と付け加えられて顔が赤くなった。


 今なら聞けるか。


 疑問に思っていたことを。




 なんとなく、海堂は口を開いた。


 「…なんで、俺と一緒にいるんだ……?…」


 「ん?」


 笑顔なの顔が一瞬驚いた顔になる。

 でも、すぐに笑顔に戻る。


 「…愛想悪いから…俺…」


 「ふうん…」


 でもさ。

 笑顔でそういわれた。

はいつも笑顔だ。


 「優しいじゃん、海堂君。」


 間違いなく海堂の顔は赤くなった。


 「なんとなく一緒にいたいから…一緒にいるのかな。食事のときとかにいろんな話してくれる人も面白いけど、それより、ご飯ってゆっくり食べたいじゃん。」


 「………」


 「そりゃ、ほかの子に比べたら…愛想悪いって見られがちだけど…優しいし、何か聞いたときはちゃんと答えてくれるじゃん。」


 それが、心地よいのだと、彼女はそういった。


 「…俺…」


 「ん?」


 「……なんでもねぇ…」


 「そう…。」


 振り向いた彼女が輝いているように見えた。


 「あ、でも…海堂君が迷惑だったら……」


 「…めいわくじゃねぇ…」


 「…そう?」


 「ああ。」


 それでいい。

 なんとなく、一緒にいればいい。

 優しいなんて言葉、言われたのは初めてだ。

 照れ隠しにそっぽを向いた。

 食事をするのも忘れていた。手にはまだよい香りを漂わせているメロンパン。



















































 「ね、今度一緒にメロンパン食べに行こうよ。」


 「……ああ。」


 「そのときはさ……」




















































 『手、つないでいこう…?』




















































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 …メロンパン、食べたいのは私です(爆)
 駅前にあるんですよ、おいしいメロンパン屋さん。
 この前行ったら雨でやってませんでした(汗)
 焼きたてのメロンパンはおいしいです。
 それから、焼きたてのクロワッサンも(爆)

 一度食べるとやめられなくなります(爆)






















































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