人付き合いは苦手だった。

 青学に入学したってトモダチなんてできないし、いない。

 それでいいと思ってた。

 無口だし、人と接するのが苦手だし。

 別にいじめられるわけじゃないからそれでいい。



 写真を撮ることだけが好きで、いろんな部活を見学させてもらっては写真を撮っていた。

 なんとなくコンクールに応募して、入選して…

 また写真を撮って…

 その繰り返し。

 今日は、どの部活を見学させてもらおうかな。


 大体、私が撮る写真はその部活に飾られる。

 みんなが気に入ってくれるから、写真を撮り続けるのかもしれない。

 部活を見学させてくれって言って、断った部活は今までひとつもない。

 みんな歓迎してくれる。


 人と接するのは苦手だけど、それを解消してくれているのが写真かもしれない。


 ……今日は、テニス部にしよう。















 テニス部も快く了承してくれたから、今日はテニス部にお邪魔する。

 ボールが当たらないように気をつけてね、って言われた。


 …テニス部の周りはすごい。

 人気があるから人が集まる。

 なんとなく、私がテニス部に乗り込んでいいのだろうか、と思ってしまう。


 カメラを持って、練習風景とか、部室とかを撮っていく。

 数人の女子が、コンクールに出さない写真があったら売ってくれ、と声をかけてきた。

 ……そんなにほしいの?この人たちの写真が。

 …私にはテニス部の魅力がわからない。

 顔がよくても、性格がよくても、テニスができても…

 所詮、同じ年頃の少年じゃない。


 「…あれ、さん、今日はうちに来たんだ。」


 「うん。」


 同じクラスの不二君は、人気がある子。

 話しかけられたのは今日がはじめて。


 「さんの写真、綺麗だよね。」


 「…ありがとう。」


 「そんなにすごいカメラを使っているわけでもないのに…」


 「どんなカメラを使おうとその人の腕に差はないわ。」


 「……へぇ…」


 パシャ、パシャ…と、シャッターを切る音が響く。

 無心でシャッターを切る。

 テニス部の人たちはなかなか絵になる。

 絵になる写真を撮らせてくれる。


 「僕も、写真撮るんだよ。」


 「そう…」


 ね、と、彼がそういった。


 「写真、現像したら一枚くれないかな。僕に。」


 ちょっと驚いた。でも、良いよ、って答えた。

 それくらいはするよ。写真を撮らせてもらっているんだから。

 ありがと、って彼は微笑んだ。別に何も感じなかったけれど。ほかの子は彼の微笑みにノックダウン…されるのだと、言っていた。

 それがどんな感情なんだか、私にはよくわからない。


 「あ〜、さんだ。俺の写真も撮ってよ。」


 「あ、英二先輩ずり〜。俺も、俺も。」


 「不二も、おチビも入りなよ。」


 ……

 レギュラージャージを来た、ちょっと含み笑いの不二君と、猫みたいな菊丸君と、それから二年生と一年生…かな?

 レンズを向けて、シャッターを切る。

 ……なかなか、いい写真かもしれない。


















































 写真ができた。

 思った以上に綺麗な写真ばっかりだった。

 少しサイズを引き伸ばして大きくしたものを、テニス部に渡した。

 みんな喜んでくれた。


 …あと、不二君に。

 それは、なんとなく撮ったスナップの中のもの。

 不二君が綺麗に映っていたから、それをあげた。


 「…ホント、綺麗な写真を撮るよね、さんて。」


 「ありがとう。でも、褒めても何もでないわよ。」


 「さんらしいね。ねぇ…」


 一瞬言葉が切れる。


 「…写真撮らせてよ。さんの姿をさ。」


 「………私なんか、モデルにならないわ。」


 「…さんだから、写真が撮りたいんだ。」


 「そう。じゃあご自由に。カメラ持ってきて何時でも撮って良いわよ。減るものじゃないから。」


 まったく、さんらしい…と、不二君が笑ってた。

 少し、彼の笑みに気をとられるようになった。


















































 写真をもらった。

 白い封筒に入った写真。

 様。

 そう書かれている字はきれいだった。

 差出人は書いてない。でも、誰だかわかる。


 …私の映っている写真。


 これはぼんやりと窓の外を眺める写真。

 こっちはお昼ご飯を食べる私。

 それから……写真を撮る私。


 たくさんもらった。


 写真の間から一枚紙が落ちた。


 『こんなにも、君のことが気になっています。』


 その文字は新鮮だった。

 なかなか他では味わえない。




 いいんじゃない。

 こんな関係。







 私はそれから、足しげくテニス部に通うようになった。

 テニス部の写真がコンクールで入賞したのもあったけれど、それより、愛しい人の勇姿を写真に収めたかったからかもしれない。


 「今日は、どんな写真撮ったの、


 「…教えないわ。」


 「意地悪だね、いつもはそういうんだ。」


 「現像したらわかるんじゃない?」


 笑わなかった私が…よく笑うようになった。



















































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 不二マジック(爆)
 写真って好きです。そのときの状況を収められるから。
 何時まで経っても変わらない姿でそこに映っている。
 私は上手な写真が取れるときってあんまりないですけどね(苦笑)

































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