午後の授業もとりあえずこなした。

 授業が終わるとすぐに僕は支度をして、テニス部に顔を出すことにする。

 ……今日は、抜け出すことは出来なさそうですからね。


 手には跡部景吾から預かった、ノートと特殊インクのペン。

 日本語の授業は疲れましたけど、これから英語でいろいろ書いていくのかと想うとちょっと気がめいります。

 おまけに、これは一種の頭脳戦。

 氷帝からのスパイである僕に、彼らが本当のテニスを見せてくれるとは思えません。

 それを、見せてもらうように引き出すのが僕の使命らしいですけど、いまだによくわかりません。


 とりあえず、部活が無事に済んでくれればいいと思います。



















































 「〜…あれ、着替えないの?」


 「あ〜…やっぱり着替えたほうが好ましいですか?」


 「そりゃ、だってねぇ。」


 「うん。にもテニスしてもらいたいし。手塚にもの勇姿を見せたいしね。」


 ………

 じゃあ、着替えますか。


 部室を借りて、テニスが出来るように運動着に着替えます。

 僕は正式に入部してないテニス部員です(今までは…)だから、服装も至って普通なわけで…


 「あれ、氷帝のジャージとちがくない?」


 「ん〜…まだ氷帝のジャージとか準備してないんで。」



 とりあえず、笑って済ます。

 このくらいはお手の物なんですよね……



 「ええと……軽くラリーからはじめようか。別に普段の練習でいいんでしょ、手塚。」


 「ああ。」


 「んじゃ、こっち。」


 「あ!ずるい。さんは俺と一緒にラリーする……」


 「桃、独り占めは良くないんじゃないかな?」


 「……はい、不二先輩。」



 青学も…結構黒い笑みが飛び交ってますね。


 ずるずると、菊丸君に引きずられて、コートに立つ。

 一年生なのか、二年生なのか…レギュラーではない人たちは僕のことを知らないらしく、

 すごく不思議な顔をして僕を見ていた。


 「部長、なんで他校生が部活に参加してるんですか?!」


 って声も聞こえた。


 「いっくよ〜。」


 菊丸君がボールを打つ。

 …確か、軽くラリーでしたよね?

 とりあえず、適度な力で打ち返す。


 右とか。左とか。

 前とか。後ろとか。


 ん〜…菊丸君がチョコチョコ動く。

 ホント、猫みたいな動きしますよね。

 ちょっと遊びますか。



 右にボールを打って。

 隠していたボールを瞬時に左に打つ。

 ………






 「なっ…何だぁ?!ボールが割れた?!」


 びっくりしましたね。

 二つ続けて打ったから、二つのボールが飛んでくるように見えたんでしょうねぇ…

 ただのラリーじゃつまらないですからね。少し遊びましょう。

 どうせ今日は跡部景吾との練習でもなし、遊んでも怒られないような気が……


 「、今何したの?」


 「ん?何も?」


 笑顔でそう返すと、不二君が笑顔になった。

 ちょっと怖い微笑。


 「嘘はよくないなぁ。」


 「あはは……不二君、なんか危ない雰囲気が漂ってますよ?」


 けらけら笑って軽くあしらう。

 脅されるのは慣れてますね。跡部景吾も良く僕のことを脅してきますから。















 「休憩!」

















 部長さんらしき人の声が響く。

 疲れたテニス部員たちが、水を飲んだり汗を拭いたり、おのおの休んでいる。

 僕も日陰に行く。

 どうも、日差しが強くていけませんね。

 日傘でも差したい気分ですよ。


 そうでなきゃ、僕の上だけ雨が降ってる…ってのもいいですねぇ……


 「、手塚に許可もらったからさ、ちょっと勝負しない?」


 不二君の笑顔。

 ああ、また。

 いいのでしょうか。まあ、僕はレギュラーじゃありませんから、試合の姿を見られてもなんら支障はないのですけど。


 「いいんですか?」


 「うん。手塚にの勇姿を見せたいんだ。」


 何か裏のある笑みを浮かべた不二君、とりあえず僕も笑って、配置につく。

 笑顔ですね。

 笑顔で試合をするって言うのは久しぶりでしょうか。






 はい、不二君からのサービス。



 …ボールを難なく受け取ります。

 しばらくラリーが続く。

 不二君が精一杯返してくるのは分かるんですけど、僕としては何か物足りない。

 あまり、一方的過ぎるとよくないので、適度に加減して打ってますけど……





 飽きました。





 ちょっと…ね。


 ちょっとだけ力をこめて、ボールを返す。





 ポーンと…ボールがテニスコートに広がる。





 僕の先取点。






 ああ、やっぱり。

 ちょっと遊びながら試合するって言うのは何か気持ちが良くないですね。

 祖国で兄とやるほうがもう少し気分がいいかもしれません。


 まあ、ここで本気で打っちゃったら後々困るんですけどね。









 加減しながらサーブを打ったり。

 適度な力でボールを返したり。


 気を使うゲームだった。


















































 「…やっぱりかなわないな。」


 「お疲れ様。」



 握手を交わして。

 汗をかいた不二君にタオルを渡した。

 ニコニコ笑っているけれど、やっぱり悔しいのかな?少し目が開いてる。


 「…ね、手塚。すごいでしょ、は。」


 「………ああ。」



 仏頂面の部長さんが返事をした。あんまりしゃべらないから冷たい印象を受けるんですけど…?

 跡部景吾といい勝負ですね。

 跡部景吾は良くしゃべりますけど、部活は厳しい。

 手塚君って人も、やっぱり部活は厳しい。あまりしゃべらないけれど。











 メモしようと想ったんですけど……やっぱりやめました。

 ほとんどの資料は覚えています。

 下手に記入して他人にばれるより、そうじゃないほうがいいかもしれません。

 だから、ノートは真っ白なまま、ペンは使ってないままで、僕はテニス部を後にしました。


 「ばいばい、。」


 「また着てな?」


 「今度は俺と勝負しましょうよ。」


 「俺が先だろ?」


 「俺だ。」


 「みんな、を困らせないの。」


 「不二先輩、抜け駆けはなしっすよ?」



 青学はにぎやかでした。




















































 「で、どうだった?」


 「ええと…今まとめてるところです。」


 「…向こうで書いてこなかったのか?」


 「うかつにメモしてもしょうがないと想いましたからね。しっかりと情報を整理しようと想いまして。」


 「こっちは大変だったんだよ。乾のやつがメモばかりしやがってよ。」


 「……そう。」


 跡部景吾の不満を聞きながら、真っ白いノートが黒く染まっていく。

 青学のざわついた雰囲気が、跡部景吾の家に着いたらすごく新鮮だったと思い知らされた。


 でも僕は、落ち着いた跡部景吾の雰囲気のほうが似合ってる…と想った。


























































〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 やっと書いた!(爆)
 でも、不二がいいとこどり(笑)
 手塚とも戦わせたかったなぁ……誰でも良かったんだけど。
 次は誰がいいですかね?(笑)












































アクセス解析 SEO/SEO対策