茶目っ気たっぷりな不思議な人に出会ったのは

 買い物をするために町に出たときだった。



















































 なんとなく、天気がいい日の午後。買い物をするために町に出かけた。

 空は晴れていたし、日差しもちょうど良い。

 久しぶりに私服に着替えて、ウィンドウショッピングだ。

 祖国にいる義理の母の誕生日が近づいてきている。

 日本からだと、2週間くらい送るのに時間がかかるから、今日は彼女へのプレゼントを買おうと思う。

 家族は、大切に。


 ぶらぶらと、外を歩きながら、雰囲気のいいお店を探す。

 母は、ピアニスト。

 一体どんなものをあげたら喜ばれるのだろうか…と、頭を悩ませながら歩く。


 「……これかな?…それとも、陶器とかのほうが喜ぶでしょうか?」



 でも、送るときに破損したら困りますね……

 食べ物は賞味期限というものがありますからうかつには送れないし……

 一体何がいいんでしょう?

 僕のセンスが試されているような気がした。

 日本には、祖国にないものがたくさんあるけれど、ちょっとおかしいものもあったりするから、選ぶのが大変だ。

 本当は跡部景吾と一緒に来ればよかったのでしょうけれど、

 あいにく彼は用事で出かけています。

 仕方がないので、ひとりで遠出してきました。

 さあ、何がいいでしょう?








 そんな風に考えて歩いていた。

 町はせわしなく動いていて、立ち止まる人はいない。

 見た目の綺麗なお店がたくさんあり、道行く人がお店を覗いては笑顔をこぼす。

 よい、休日だった。


 「…お嬢さん。」


 浮かれた声が聞こえた。

 大きな町だから、一人でも多くのお客さんに足を踏み入れてもらうために、声を掛けるのは珍しくないのだろう。

 前に跡部景吾と一緒に買い物に来たときも、やはり声を掛ける人がいたのを覚えている。


 「ねぇ、お嬢さんってば。」


 聞こえる声は後ろから。

 最初の人には断られてしまったのかな?また、別の人に声を掛けているような……


 「な〜んで、無視するのかな??」


 浮かれた声。

 ちょっと寂しそうな声。




 そして……






 僕の肩に手を掛けた人。






 ……

 …………

 ……………………


 今まで、僕のことを呼んでたんですか?この人は。


 驚きと困惑に満ち溢れた目で、声を掛けてきた少年を見つめた。

 ええと……

 なんていうか……この町に合った雰囲気の服を着てる、背の高い人。

 にっこにっこしてる。

 なんだろう?


 「何か?」


 「何かって……だって、声掛けてもぜんぜん振り向いてくれないんだから。ね、暇でしょ?」


 笑顔がすっごい似合う人だった。

 でもさ…

 決め付けなくてもいいんじゃないかなぁ?

 暇でしょ?って。

 確かに暇なんですけどね?


 「その辺の喫茶店でお茶でもしない?おごってあげるからさぁ…」


 にっこにっこ。

 ホント、笑顔が…こぼれてる人ですね。

 でも僕、買い物あるんですよね……


 「買い物あるんですけど……」


 「え〜?何買うの?」


 「えっと、母への誕生日プレゼントを…」


 「お母さん想いなんだね。じゃ、俺が手伝ってあげるよ。プレゼント探し。だからさ、喫茶店でお茶しよ?」




 半ば強引に喫茶店に連れて行かれました。

 ん〜…この状況、どうすればいいんでしょうか?























 「俺さ、千石清純っつーの。君は?」


 喫茶店に入ってジュースとチョコパフェおごってもらっちゃいました。

 ああ、どうしましょう。


 「って言います。」


 やっぱり驚くかな?

 僕のこと女の子だと思ってるみたいだしね。

 ん〜…どうしましょう?









































 今日は天気が良くて部活もなくて、久しぶりに遊びに来た。

 男がひとりで待ち歩くのもなんだなぁって思いながらぶらぶら歩いてたら、見つけたんだ。

 今、俺の目の前にいる美人をさ。

 俺ってラッキーだよね。

 黒髪の美人。

 女の子にしては背が高めだけど、華奢な体つきで色も白くて…

 顔も整ってるしさ、なんか俺とおんなじでぶらぶら歩いてるみたいだし……で、声を掛けてみたわけよ。


 最初は振り向いてくれなくて、で、しょうがないから肩たたいた。

 振り返って困惑した表情を見せてたけど、それがやっぱり可愛くて。

 髪の毛は女の子にしては短め…なのかな?

 長毛でも似合うと思うけど、短くても似合う。


 「その辺の喫茶店でお茶でもしない?おごってあげるからさぁ…」


 ちょっと強引だったかもしれないけれど、近くの喫茶店に連れてった。





 遠慮しちゃって何も頼もうとしないから、ドリンクとチョコパフェ頼んであげた。

 やっぱり、美人だなぁ……


 「俺さ、千石清純っつーの。君は?」


 軽く自己紹介。

 こういうのっていい出会いになったりするんだよね。





 「って言います。」







 …………え?今なんていった?


 何だろう…なんか、幻聴が聞こえた気が…



 「…男の子?」



 がっくりうなだれた。

 あ〜…俺の出会いが……



 すっごい美人なんだけどなぁ……着てる服も…そんなに違和感ないし…

 漆黒の髪に黒曜石のような瞳でしょ?肌は白くて、おとなしそうで…あ〜…もったいない……


 「なんだぁ…可愛いから女の子だとばっかり思ってた〜……」



































 千石は少しうなだれた。

 はおろおろとそれを見ていることしか出来なかった。

 やっぱり悪かったかな?

 少し、後悔する。


 声かけてきたのは千石であって、に非はないのだが。


 「あ、でも良いや。美人だし。お母さんへのプレゼント買うんでしょ?」


 千石はにこにこと笑顔を振りまいた。

 周りにいる人々がささやく声が聞こえる。

 綺麗なカップルだわ…と。

 それは嫉妬のようであり、憧れのようである。


 「…?」


 「って呼んでいい??」


 「あ、はい。」


 「そっかぁ…男の子だったのか……びっくりした…あ〜…でももったいないなぁ…こんなに美人なのに。」


 千石がつぶやく。




















 それから喫茶店を出て、二人は買い物に行った。

 千石のセンスはなかなか良く、外国への贈り物だ、と伝えたら日本らしい良いものを選んでくれた。

 たくさんあったので、その中からいくつかを選んで包んでもらう。

 あとは郵送するだけだ。



 「どうもありがとうございました。」


 が笑顔を見せた。

 千石の顔が赤くなる。


 「いいって!俺も楽しかったし。」


 千石もの笑顔につられて笑顔になる。

 ホント、もったいないよな…と、つぶやく声は町のざわめきにかき消されていた。


 「あ、でも…御礼とか…したいです。」


 おずおずと言ったに、千石は笑んだ。


 「じゃあさ、俺とプリクラ撮ろう?」


 「?プリクラ…ですか?」


 一体それは何なんだろうと、首をかしげる。その姿を見て千石は声を立てて笑った。


 「ちゃん、プリクラ知らないの?!いまどき知らない子がいたんだ〜。」


 感心したような、馬鹿にしたような笑みである。


 「じゃ、初プリクラということで!」


 元気に、の手をとって近くのゲームセンターへと向かう。

 驚きながら、でも、御礼だからなぁ…と、笑顔で悩みながら手を引っ張られる



 傍から見ると、二人はすでに恋人同士。

 ほんわかした甘い雰囲気が出ているような気がしないでもない。







 「はい、これがプリクラ機。中に入って写真撮る!そうすると…シールになってでてくる優れものさ。」


 周りにいろいろ描かれた、珍しい機械がお店の外に飾ってあった。

 機械の横には入り口がある。


 『男性のみでのご入場はお断りいたします。』


 という張り紙も張ってあるわけで……


 「千石君?中に入れない気がしますけど……?」


 心配になって尋ねたら、へーき、へーき、という笑い声が返ってきた。


 「誰が見たって、ちゃんは女の子に見えるからさ。」


 それでも不安を隠せないまま店内へ。

 店内には制服姿の女の子たちがたくさんいた。

 友達と来ているものもいれば、カップルで来ている人もいる。

 店員はそれほど厳しくなく、を連れた千石も簡単に入り口を通過することが出来た。


 「あ〜、キヨじゃん。どーしたの?可愛い子なんか連れて〜。」


 それは同じ学校の友達であろうか。

 女の子が数人近づいてきて、千石に話しかけた。


 「可愛いでしょ?俺の彼女〜……手出し無用だかんな?」


 にっとずるい笑みを浮かべた千石に、を興味深く眺める女の子たち。


 「すっごい美人ジャン。」


 「きれーな顔してる……」 


 なんて、そんなこと言われてもうれしくないんですけど?と、一人苦笑しているのはである。




 「んじゃ、撮るよ〜?」


















































 『初デート。』


 『めっちゃ美人!』


 『お似合い?』


 『食べちゃいたいくらい。』




 千石の字体で書かれたその文字。

 自分の分のプリクラを鞄にしまった。

 なんていうか……

 映ってる自分は、恥ずかしそうだった。

 隣にいる千石は、最初は良かったのだが、3枚目、4枚目になると、抱きついてきたので困ったものだった。

 本当に、恥ずかしい写真だと思った。



















































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 千石清純です。
 企画第二弾!どうでしょうねぇ?こういうのって。
 なら難破されるのは日常茶飯事かなぁって思うんですけど?

 千石とお買い物など…というリクエスト内容でした!
 どうもありがとうございました!!

 跡部に見せたら怒られるんだろうなぁ…あのプリクラ(爆)






























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