あんな細身の男が、笑ってばかりいる、華奢な男が、世界トップの選手だなんて考えられなかった。

 だから、勝負を挑んだ。

 体力勝負だったら絶対に負けない自信があった。











 バスを降りて少し歩くと、すぐにあのテニスコートに到着する。

 今日ここに来ることは青学のメンバーの誰にも告げず、一人でやってきた。

 あいつらはみんなでどこかに出かけるって言っていたけど、俺はそれを断ってこっちにやって来た。


 …何故って?


 あの華奢な男と勝負がしたかったから。

 あんな細身の男が、世界トップだなんて信じられなかった。

 越前が称賛するやつ。

 …あんな華奢なやつが?


 俺の中に疑問が浮かんだ。

 俺はまどろっこしいことは好きじゃねぇ。

 一度自分の腕でためさなきゃ、信じられねぇ。


 だから、わざわざみんなの誘いを断ってやってきた。






 あいつ、はいつもと同じ日陰のベンチに腰掛けていた。

 今日は制服ではなかったから、テニスをしても問題ないだろうと思い、声をかける。


 「よっ!」


 あいつは笑顔で俺のほうを向いた。

 見れば見るほどきれいなやつだった。


 「………君は確か……」


 「青学の桃城武!」


 「…ああ、この前は申し訳ありませんでした。せっかく皆さんで来てくださったのに、跡部景吾のせいで……」


 「いいって、いいって。それよりさ、今、暇か?だったら勝負しようぜ。」


 意気込んで言う俺に、彼は少し困ったような表情を見せて、テニスコート内を見渡してから言った。


 「あいてるコートがあればいいのですが…」


 彼が座っていたベンチの前にあるコートは別の客が使っていて、当分あきそうになかった。


 「ま、どこかあるって。」


 軽い気持ちで彼を誘い出して、あいているコートを探した。







 すぐにあいているコートが見つかった。

 …そこは日差しがギラギラ当たるコートで、今日の天気では少し酷かもしれないが、コートの状態はなかなかよかった。


 「おっし、やろうぜ。」


 とりあえず少し準備体操してから、とネットをはさんで向かい合わせになった。

 は相変わらず困ったような笑みを浮かべて、時折空を見上げていた。


 「の心配でもしてんのか?それなら大丈夫だって。今日は天気予報で絶好の洗濯日和です、って言ってたからな。」


 二って笑ったら、相手はますます困った笑みを浮かべていた。



 「…まあ、いいでしょう。それじゃはじめましょうか。」




 最初のサーブはボールを準備していた俺がやることになった。


 気合をこめて、あいつの実力を確かめるようにボールを打った。


















































 試合運びは順調だった。

 勢いのあるボール捌きだったけれど、彼のボールは難なく取ることができたし、こっちのサーブを相手が返せないから、僕が不利なわけじゃなかった。

 …不二君に比べたらテニスをしやすい相手だ。


 だけど……


 日差しは容赦なく僕の体に降り注いでいた。

 もともと僕の祖国は夏でも日本ほど気温が高くはないし、湿度も高くない。

 生まれつき熱に弱い僕にはあまり適さない地域、日本。

 普通に外を歩くくらいなら大丈夫だけど、こうやってテニスとか激しい運動をするには不向きの場所だ。

 …こういうときは祖国が恋しくなる。


 でも、彼は僕と試合をするためにわざわざ来たわけで、そんな好意に冷たい返事などできるわけがなく。

 少し天気の心配をしながら試合をすることになったんだ。


 …体力がなくなったわけじゃないけれど…

 熱いのには耐えられない。

 汗をかく…とか、自分の体が熱くなるわけじゃなくて、日差しが僕を攻撃してくる。


 白人は日差しに弱いって…誰かが言っていた気がする……

























 
「…おい!!どうした?!」



























































































 何か冷たい感触がある。

 心地よい冷たさだ。











 …次に僕の意識が戻ったのは日陰のベンチの上だった。

 冷たい氷が頭の上にあって、涼しい風が体に当たっていた。


 「…気がついた?」


 「………あ、僕……」


 「まったく、びっくりしたぜ。急に倒れるんだからよ。直前まですごい球打ってきてこっちが体力の限界だ〜…とか思ったら、急にだもんなぁ…」


 あわてて起き上がった。

 急に動いたから頭がガンガンした。


 「…ごめんなさい。試合の途中だったのに……」


 「別にのせいじゃねぇって。、色白いし体細いから大丈夫かなって思ってたけどさ…」


 「あの、ほんとにごめんなさい…僕、まだ日本のじめじめした暑さになれてなくて……」












 別にが悪いわけじゃないのにさ。謝ってくるからすごいびっくりした。

 日差しの当たるコートしかあいてなかったとはいえ…

 自分に不利な状況で、俺の速球、剛球をいとも簡単に打ち返した男……


 あ〜…なんか自己嫌悪


 体力じゃ勝ったかもしれないけどさ、試合のレベルで言ったら……天と地の差だぜ、まったく。


 努力だけじゃない。

 天性の才能を持ってる。


 悔しいけど…認めるしかねーな。









 いまだに謝ってるをとめた。


 「もういいって。別にが悪いわけじゃないんだからさ。」


 「でも…迷惑かけちゃったから…」


 「いや、その…なんだ…俺さ、を疑ってたから…さ。体力勝負なら負けないし、こんな、華奢な体で本当にテニスができるのか、とか思っててさ。」


 言い訳か?俺。


 「だから、一回試合してみたかっただけだし……」


 言い訳なんて…男が使っちゃいけねぇな…いけねぇよ!……


 「御見それ致しました!!!!」



 ………潔く謝るってのが男じゃねぇ?

 今顔を上げたらがおどおどしている顔が見えるかな…とか思った。


























 「今度さ、の体調がいいときにもう一回お願いします!」


 「…いつでも大丈夫だよ。僕のほうこそ今日は……」


 「あ〜…もうそれは言わない!が悪いわけじゃないんだからよ。それじゃ、またな。」


 「ええ、さようなら。」



 軽く手を振って俺たちはそれぞれの方向へと分かれた。










 なんとなく心がすっきりしていた……




















































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 ごめんなさい(汗)
 桃ちゃんが、桃ちゃんじゃないです(死)
 桃ちゃんとか…口調がわからない(汗)








































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