なに…こいつ……

 只者じゃない………

 まったく歯が立たなかった。

 互角のゲームなんてさせてもらえない。

 余裕な顔で、笑顔で、絶対にボールを見逃さない。

 ……惨敗だ。

 不二を負かした相手だから、どんなやつかと思って興味本位で来てみたけれど…

 いったい、何者なんだろう……




































 三日前、お昼のときに不二が俺に面白い話をしてきた。


 ストリートテニス場の貴公子、

 不二がまったく歯が立たなかったという相手。テニス部に所属しているわけじゃないってことと、俺たちと同じくらいの年頃だってことしかわかっていない。


 「え〜…そいつテニス部じゃないんだろ?なんで不二が負けるのさぁ?」


 「僕も最初会ったときはびっくりしたんだよ。ほんと、テニスをやるような体つきじゃないんだ。折れそうなくらい華奢でさ。」


 「へぇ…」


 「でも、すごい強くて。僕まったく歯が立たないんだ。この前の休みにも相手してもらったんだけど…ぜんぜん。前より強くなってる感じがしてさ。」


 不二でも歯が立たなかった相手。少し興味が湧いた。

 どんなやつなのか一目見てみたい。


 「ね、じゃあ次の休みのとき、一緒に行く?と戦ってみれば?」


 「ん〜…不二でも勝てなかった相手でしょ?すごい興味湧くなぁ…うん。つれてってよ。」


 「いいよ。じゃあ、今度の休み、九時にいつものバス停ね。」


 「わかったにゃ。」






 興味本位だったんだよ。

 だって、不二を負かした相手だもん。会ってみたい。

 それに…不二を負かしたっていってもレベルは手塚ぐらいなんじゃないかなぁって…思って。

 それだったら、互角とはいかないまでも、テニスといえるようなゲームはできる。だから、うなずいたんだ。




































 「やあ、、おはよう。」


 それで…こうやってつれてきてもらった。

 不二がいつも来ているというストリートテニス場は大型のテニス場だった。それにお金もかからない。

 コートの状態もよいしなかなかいい場所だ。


 「おはよう、不二君。そちらは?」


 …って呼ばれた少年は俺を見た。不二よりも少し背が高いくらいの身長で、不二が言っていたように華奢な体つきをしていた。

 黒髪に黒い瞳。でも、肌はすごく白くて……ああ、童話の白雪姫を男の子に変えたような…そんな感じがした。


 「青学テニス部の菊丸英二です!よろしくにゃ。」


 「はじめまして。僕は。」


 握手をしてもらった。

 ラケットを握ってできるまめの後なんてまったくなくて、の手はすごくきれいだった。

 やっぱり、テニスをする少年には見えないな……

 こんな華奢なやつに不二が負けたのかと思うと…少し笑えた。

 だって、テニスをするようなやつには見えないんだもの…。








































 でもそれは…俺の思い違いだった……



























 「ゲームセット。」





















 びっしょりと汗をかいた俺。コートの反対側にいるは涼しげな表情だ。

 点数が取れなかった。


 ……というよりも、まじめに球を返せたのが少なすぎる。

 相手は一度も俺の球を逃さなかった。

 ……強すぎる。


 自分の浅はかさを思い知った。









 「…大丈夫?」


 なかなか立ち上がらない俺に声をかけてくれた。

 冷たい飲み物も渡してくれた。


 「ん〜…強い!!どうしてそんなに強いんだにゃ?!まったく歯が立たなかったにゃ〜……」


 あははっと…彼は上品に笑った。

 ベンチで試合を見ていた不二が微笑んでいった。


 「だから言ったろう?僕が一度も勝てない相手だって。」


 「はにゃぁ……」


 不二の隣に腰掛けて、タオルで汗を拭きながらもらったジュースに口をつける。

 冷たくて…頭ががんがんした。








 「ねぇ、どこの学校通ってるの?本当にテニス部じゃないの?ねぇ…どうしてそんなに強いのさ?」


 「…ん〜…秘密。」


 でも、は答えてはくれなかった。

 俺がに勝てたら教えてくれるらしい。


 「くやしいにゃぁ……」


 「…でも当分に勝つなんて無理だよね。」


 「どうして?」


 「だって、実力の半分も出してないじゃないか。」


 ばれた?と、がおどけていた。

 あれで実力の半分も出していないのなら、本気を出したらかなう相手なんているのだろうか…


 「…くやしいなぁ…よし、もう一回!!」


 「……休憩足りてる?」


 「絶対そーまを負かして、どんなやつなのか教えてもらうんだにゃ。」


 「そう…じゃあ、がんばって。」


 涼しげな表情で、がコートに入る。

 俺がサーブを打つ。











































 「ちぇ〜…勝てなかった。」 


 「また、がんばってね。」


 は涼しい顔。

 無理にのボールを取ろうとした俺はの球に踊らされてた。

 おかげで足は痛いし、手は痛いし、何箇所かすりむけてる。


 「はい、どうぞ。」


 清潔なタオルと、オキシドールと、絆創膏。

 がくれた。

 絆創膏を貼ったら、どこかのいたずらっ子みたいになってしまった。











 もう夕暮れに近かった。

 お昼も食べないで、朝からずっとに挑んでいたから、体中が痛い。


 「お疲れ様。」


 「不二〜…勝てない……」


 「僕も勝ったことないからねぇ…」


 「またこよう!!次は勝つからにゃ!」






































 不二が何度もあのテニスコートに通う理由がわかった気がする。



































 次の休みから、俺と不二はそろってに勝負を挑みにテニスコートへと向かうのだった。























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 菊丸も惨敗(爆)
 この主人公、なぞが多くていいですね(何)
 そのうち設定が明かされますよ(笑)














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