乾とあろうものが天才テニスプレーヤーに興味を持たないはずがない。

 氷帝学園の出身であろうと、ほかの学校の生徒であろうと、何らかの形で接触を試みるだろう。


 そう。


 接触を試みた。

 乾の情報網は伊達じゃないし、友達の中には氷帝に通う生徒の知り合いもいる。

 何度か連絡を取りたいと言ったが、思った以上に跡部が厳重にを守っているらしく接触をする機会は得られなかった。









 だが、乾はあきらめたりしなかった。


 どこからかの携帯電話の番号を入手していた。

 もちろん、そんなことが他の生徒に知られたら大事になるので部活のときも完璧に隠し通した。


 部活が終わって自宅に帰り、いろんなデータを整理した後で、彼はの番号が記入されたノートの切れ端を取り出した。


 「…苦労したよ、これを手に入れるのに。」


 満足そうな笑みを浮かべて、机の上にノートと鉛筆を用意する。

 それから、おもむろに自分の携帯電話を取り出して、番号を入力する。


 こうやって番号を手に入れたことが跡部にばれたならすぐにでも携帯電話を解約させるだろうからつながる可能性は低かった。

 だが、電話が鳴る機械音がする。


 どうやら、解約はされていないみたいだ。


 だが、相手が出るまではまだ接触ができた…とはいえない。

 この番号が似非情報かもしれないし、跡部が解約ではなくほかの手を使って接触を妨害しているという可能性もある。

 自信が出る確率は50%だろうと乾は予想していた。


 「…あ…」


 そんなことを考えていたら電話がつながった。

 受話器越しに聞こえてきたのは滑らかな英語の発音。


 『Hallo.Who's speaking,please?


 ……英語だ。

 これは跡部が接触を妨害したのかもしれない…と考えつつも乾はとりあえず名乗った。日本語で。

 もしもなら日本語が使えるはずだから。


 「もしもし、青学の乾貞治ですが…」


 『…あ、青学の方でしたか。びっくりしました。えっと、です。』


 「こんばんは。今時間大丈夫かな?」


 『はい、大丈夫ですよ。何か僕に用事でもあるんですか?』


 接触は成功だった。

 あどけない笑い声ときれいな日本語の発音で、が電話に出たのだ。

 電話番号を入手してくれた友達に何か礼をするべきだな、と、考え始めた。


 「ああ、そんなに長い間じゃなくていいんだけどね……今、英語だったみたいだけどどうして?」


 『ああ、それは…誰からかかってきたのかわからなかったからですよ。僕に電話してくる人なんて跡部景吾のほかには家族くらいしかいませんから。』


 …つまり、英語圏の国出身と……

 ノートに他愛のない会話から得た情報を記入していく。


 「なるほどね。君は…確か氷帝出身だった…かな?」


 『ええ。』


 「…部活は入っていないのかい?」


 『入ってませんよ。……あ、でも、正式に部員登録してないだけかもしれません。跡部景吾と一緒にテニス部の練習を見てますから。』


 ………

 つまり、氷帝テニス部は世界トッププレーヤーからの指導を受けられる状況にいるということだ。

 …侮れない。

 さすが、跡部だ。

 青学ほどのレベルとなれば、氷帝など、他校の情報が必要になってくる。

 乾の額に汗が浮かんだ。


















































 急に電話がかかってきたときは驚いた。

 お風呂に入り終わって部屋でゆっくりしようと思ってたときに机の上においてある、跡部景吾が持っていろといった携帯電話が鳴った。

 家族からの場合の着信音と、跡部景吾からの着信音は設定してあるが、電話の音はそのどちらでもなかった。

 もしかしたら、家族が新しい電話番号に変更したのかと思い、僕は電話に出た。


 「Hallo.Who's speaking,please?」


 数秒経ってから、受話器の向こうから日本語が聞こえた。

 それはついこの間の校外学習で会った、乾君…という青学の人だった。

 一体どこで僕の電話の番号を手に入れたのか少し心配になったけれど、まあ、電話番号なんてコンピュータが作り出す数字の並べ替えだから、適当にかけてつながったのかもしれない。


 それから、なんかいろいろ聞かれたから答えた。

 当たり障りのない、情報が流れても僕が困らないものだけ。

 後で電話番号は変えてもらおうかな…と、跡部景吾に言おうと思っていた。






 そう思っていたら跡部景吾が部屋の扉をノックしてきた。

 電話をしていたんで返事をしなかったら、扉が開いた。


 「おい、こら、。お前、なにして……電話か。」


 そのまま僕の隣に座った。




 僕のことを監視しているのが跡部景吾である。

 最初に逃げ出したから、僕が気まぐれだからって言うのもある、って本人は言っていたけれど、それよりも大きい理由が一つ。

 僕の意思を尊重してるんだ。

 他人に知られて騒がれたくない、っていう……


 「…お前、誰と電話してんだ?日本語じゃねーか。」


 「……乾君……


 「なっ?!


 僕の腕から思いっきり携帯電話を奪うと大きな声で怒鳴っていた。


















































 「…君?」


 たくさんの情報が集まったんで、どうもありがとう、といおうと思ったら受話器越しの相手の声が小さくなった。

 誰かが部屋を訪ねたらしいからその人と話をしているのかと思った。


 ……


 『おい!!青学の乾か?!お前に変な電話してくんじゃねーよ。一体どこの誰から仕入れた情報だ、こら。


 跡部の怒鳴った声。

 受話器を耳から遠ざけても十分聞こえるほど。


 ふっ、やはり跡部がを手放すはずがない…か。


 返事をしたら跡部の声がますます大きくなった。

 乾は苦笑していたが、通話は乱暴に切られてしまった。

 にお礼もいえなかった…と、少し残念がった乾だが、乾のノートにはびっしりに関する情報が書かれていた。




















































 ぶちっ


 と、跡部景吾が通話を強制終了させた。


 「こら、知らない人からの電話には出るなって教わらなかったのかよ?」


 「両親からかもしれないじゃないですか。」


 「…どう考えたって日本の携帯番号じゃねーか。」


 「日本の携帯番号の仕組みなんて知りませんよ。」


 「ったく。どこで情報が漏れたか知れねーけどな。今後気をつけろ?」


 「?」


 「青学の乾なんかにお前の情報が漏れたなんて…」


 跡部景吾はぶつぶつ文句を言っていた。

 それから携帯を持って立ち上がった。


 「…?」


 「この携帯は明日解約するぜ。今度は情報が漏れないように別のを渡すからな。知らないやつからの電話には応じるなよ?」


 「……」


 「わかったのかよ?


 「うん。」


 ったく……

 って、ずっと言ってました。


 僕の意思を尊重してくれるから、この人は結構いい人なんですが、口調が悪すぎます…

 言い方も命令口調なので時々ん?って思うことがあります。きっとこれはカルチャーショックなるものなのでしょう……


























 翌日、僕には新しい携帯電話が渡されました。

 指定番号からしか着信できないようになっている優れものです。海外からの電話もちゃんと登録しておいてくれました。



 「俺と、お前の家族の番号からしか着信できないようになってるからな。」


 ぶっきらぼうに渡されたけれど、

 あれは彼なりの優しさだと……僕は解釈してます(爆)





















































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 乾と電話(爆)
 跡部は怒るよなぁ…っていうか、うちの跡部さん世話焼き係(爆)
 が気まぐれだからしょうがない。
 主人公の祖国はそのうち会話に出しますのでww



































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