彼がどこの学校に通っているのか、僕は知らない。

 彼がどんな人なのか、僕は知らない。

 ただ、滅多にない部活の休日に、ストリートテニス場に行くと必ず彼はいる。

 どうやって知り合ったのか覚えてなんていない。

 だけど、ストリートテニスをするときは必ず彼僕の相手になってくれる。

 …僕はまだ、一度も彼に勝ったことがない。












 今日こそは…と思ってまた、テニス場に足を運ぶ。



































 「あ、おはよう。今日は部活ないんだ。」


 「うん。また相手してくれるかい?」


 「いいよ。でも、不二君も随分負けず嫌いなんだね。」


 微笑んで立ち上がるのは、ここで知り合った不思議な少年、 。僕が…一度もテニスで勝ったことのない人。

 どこの学校に通っているのかも、どんな人なのかもまったくわからない。

 知っているのは、ほとんど毎日このテニス場に通っているということと、テニス部に所属しているわけではない…ということだけ。













 「ゲームセット!」












 やっぱり今日も負けた。

 いつ来ても勝てない。

 学校では天才って言われている僕だけど…本当の天才は彼じゃないかと思う。

 ……今までの相手の中で一番強い。……手塚よりも。


 は僕のツバメ返しでさえも軽々と返してくる。

 並みの瞬発力じゃない。洞察力もある。



 「お疲れ様、不二君。」


 はい、どうぞ、と、僕に冷たいジュースをくれた。


 「あ、ありがとう。……やっぱり、には勝てない。」


 「不二君は十分強いじゃないか。」


 「…どうしてだろうね。僕はテニス部で、君はテニス部じゃないのに。」


 「さあ。僕はきっと運がいいんだと思うよ。」


 いつも笑顔で。

 彼は手にしていたタオルで汗を拭きながら僕にそういった。




 本当に不思議な人だと思う。

 テニスをしているは涼しげで。

 実力の半分も出していないんだろうって思ってる。




 いったい彼は何者なんだろう。

 気になるけれど、聞いても答えてくれないことは百も承知だ。

 だから僕は聞かない。




 「…もう一回。」


 「もう一回?不二君疲れてるみたいだけど…」


 「これくらいなんでもないよ。それにを負かしたい。僕が君に勝ったら君のこと教えてくれるって約束だからね。」


 「そうだね。じゃあ、がんばって。」


 笑顔でラケットを握ると、はコートに入った。



















 さあ、ゲームが始まる。

 今度こそ、彼に勝つぞ…と、気合をこめたサーブを打つ。


































 コートにボールを打つ音が響く。




































 「…お疲れ様。」


 「……またくるよ。次は勝つからね。」


 「…楽しみにしてるよ。」
























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 シリーズ、ストリートテニス場の少年(爆)
 強いね(爆)不二君負かしちゃうんだもん。
 なぞの多い少年は大好きです(爆)




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