キッチンルームが朝からがたがた忙しそうだった。

 部活にいく準備をしていた跡部は、何気なくキッチンルームを覗き、唖然とした。


 青いエプロンと三角巾をつけた

 メイドに薄力粉はどこにある?とか、卵はある?とかいろいろ聞きながら何かを作っている。

 その姿が似合いすぎていて恐ろしい。


 「何やってんだよ、。部屋に居ないと思ったらこんなところにいたのか。」


 「ああ、跡部景吾。おはようございます。」


 メイドはおろおろしながら見ていたけれど、が大丈夫だよ、というと顔を赤らめてキッチンルームを出て行った。


 「なにしてんだ?」


 「スコーンを作ろうと思いまして。Afternoon tea には欠かせないですからね。クッキーでも良かったのですが…今日はスコーンの気分でした。」


 「お前、部活はどうすんだよ。」


 「これが出来上がったら行きますよ。先行っててください。出来立てのスコーンと、紅茶を持っていきいますから。」


 終始笑顔。

 跡部は呆れてものも言えなかった。

 仕方ないな、と舌打ちして、部活に遅れないよう家をでる。

 ちゃんと来いよ、と、に釘を刺して。



 「…さて、作りますか。」


 一人、キッチンルームに立ったは材料を見て微笑む。

 跡部の家は薄力粉も卵も高級品ばかり使っている。

 なかなかよいものができそうだ、と、一人感心する。


 「とりあえず、こんなものかな。」


 まずは下準備。

 小麦粉とベーキングパウダーをあわせてふるいにかける。…きめ細やかな粉にするのだ。

 ついでに砂糖と塩もふるってみる。

 なかなか楽しそうだ。

 つい、祖国の歌を口ずさみながらてきぱきと作業を進めていく。


 「ん〜…この感触…微妙…」


 つぶやきながら、バターと先ほどふるった粉類を揉みこんでいく。

 その後、溶き卵と


 「…おや…クリームチーズがないですね…」


 ということで、ヨーグルトを加えることになった。

 軽く混ぜていき、牛乳を加える。

 ……の手が粉で白く染まっている。

 エプロンも作業をする過程で白く染まった。


 「これくらいかな〜…」


 生地が手につかないくらいにまとまったらラップで包んで冷蔵庫で二時間冷やす。


 ……暇ですね。

 そうがつぶやいた。





 これ以上使わないものを洗い終えても、時間が余る。

 携帯電話が鳴った。

 手を洗って電話に出る。


 『おい、まだ終わらねぇのかよ。こっち来て相手しろ。』


 「ん〜…まだ。」


 『ったく…』


 「ちゃんと出来上がったら行きますから。」


 『必ず来いよ。忙しいんだからよ。』


 「はいはい。」


 笑顔で電話終了。



 二時間には満たないけれど、生地が程よくなったので冷蔵庫から取り出して作業再開。

 先ほどの生地をのし棒で伸ばす。

 厚さ二センチから三センチほどに伸ばすと、なかなかいい感じになった。

 後は型を抜いて、油を引いた鉄板の上におく。オーブンで大体15分ほどだろうか、焼く。

 卵を使って照りをつけることも忘れない。

 焼いている間にはもう、キッチンルームは最初のころよりも綺麗に片付いていた。これぞマジック……


 こんがりと、いいにおいが漂う。


 久々の休日で屋敷に帰っていた主人が香りに誘われてキッチンルームにやってきた。


 「君、何を作っているのかね?」


 「おはようございます。今日は Afternoon tea のためのスコーンを焼いてました。

  もうすぐ出来上がりますが、おひとついかがですか?」


 「ああ、もらおうか。君は本当に何でもできるんだね。」


 「お褒めに預かり光栄です。」



 焼きあがったスコーンを幾つか皿の上に乗せて、メイプルシロップを添えて屋敷の主人に差し出した。


 「…さすがだ。」


 「ありがとうございます。」


 材料が良いからですよ…と、心の中でつぶやいていたりする。


 焼きあがったばかりのスコーンを皿に盛るとラップをかけて、紅茶を準備して、部活へ行く支度をする。


 「これから部活かい?」


 「はい。」


 「がんばりなさい。」


 「ありがとうございます。」




 荷物を持って、氷帝へと赴く。




















































 「あ、さんだ。」


 























 一番初めにに気づいたのは日吉だった。







 「おっ、、なんやいいもん持ってはるなぁ…」


 次に忍足が、が手にしているものに気づく。

 わやわやと人が集まる。

 跡部の眉間にしわがよる。


 「遅い。」


 「…おいしいのが出来上がったんですから、文句言わない。」


 跡部の口にスコーンを押し込んだ。


 「…っ…」


 「が作ったんかいな?」


 「はい。朝から作ってました。」


 「わ〜…一個ちょーだい。」


 「どうぞ。」


 「俺も。」


 「俺にもちょうだい。」


 人がいっぱい。

 人がいっぱい。

 の周りに集まって、スコーンを食べていく。

 大量に作ったので、人数分はあるだろう…何しろ、跡部の家のオーブンは大きい。



 「、料理もできるんやなぁ…」


 「、いいお嫁さんになれるじゃん。」


 跡部は何も言わなかった。

 少し苦い表情をしていたが。


 「お口にあいませんでした?跡部景吾。」


 「いや…」


 「そう、それなら良かった。何でそんな怖い顔してるんですか?」


 「……お前のせいで部活が中断されちまったじゃねぇか。」


 「あら…」



















































 いつもと違った… Afternoon tea の時間。

































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 お菓子作りは好きです。
 あれは楽しい。
 ただ、手が冷たい人のほうが向いているようですね。
 生地が体温で温まるのがあんまり良くないみたいです(汗)


































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