結局、会う前に逃げ出したホームステイ先の家の息子に見つかった僕は、彼の家に滞在することになった。

 おまけに彼の通う学校に明日から通うことがすでに決定しているらしい。

 さすが、用意周到だ。

 日本語がしゃべれるからコミュニケーションには困らないだろうけど、お前、日本語かけるのか?とか、結構気を使ってくれるから、まあここにとどまってもいいかって思い始めた。



 跡部景吾の家は日本でも屈指の大豪邸だった。

 本当は誰にも気づかれずに欧米での報道の収集がついたころまで日本にいる予定だったんだけどなぁ…って。

 だって、跡部家といえば日本でも有名な家柄で。

 そんな人と一緒にいたら嫌でも有名になって、名が知れるのは目に見えている。

 だから、逃げたって言うのに、どこまで情報網があるんだか知らないが僕を見つけた。

 もう逃げても無駄かな…





 「ほらよ、ここがの部屋。テレビもパソコンもあるし、エアコンだろうがなんだろうが、一通りそろってるから生活にゃこまらねぇだろ。」


 「わあ、広いですねぇ。」


 「…お前んちにはかなわねーよ。アルヴィン・って苗字は日本でこそそんなに有名じゃないけど、お前の祖国じゃそれなりに知れ渡ってる苗字なはずだぜ。」


 「アルヴィンって呼ばないでくださいよ。僕はで生きてるんですから。大体、いったいどこでアルヴィンなんて知ったんですか?親族にしか知られてない名前なのに。」


 「……お前のパスポート。」


 「…あ…」


 案外抜けてるな、って笑われた。

 確かに抜けてるかもしれないけれど…この人に笑われると無性に腹がたつ……


 「ま、いいや。必要なものがあったら何でもいいな。用意してやっから。」


 「ええ。これだけ物があれば困らないと思いますけど…」


 シングルベッドとは言いがたいほど大きいけれど、置いてある枕はひとつ……な、大きなベッドがひとつ。

 それから、いやに大きい高性能なテレビに、パソコン、エアコン……数えているときりがないくらい物であふれていた。


 「荷物置いたらこっちにこいって。制服渡すからよ。」


 「あ、はい。」


 別に…学校なんて……

 ぼーっとしてたら、早くこいって怒られた。

 …この人にはあんまり逆らわないほうがいいなぁと…思った。














 真新しい氷帝の制服が目の前にあった。

 「サイズ、大丈夫か?おい。」


 「…ええ。ぴったりですよ。」


 なぜか跡部邸には試着室があって。

 試着しろって言われて半ば強制的に氷帝の制服を着る羽目になりました。

 ん〜…やっぱり、ステイ先の人選間違えたかな?


 「なかなか似合うじゃねーか。」


 彼はにやりと笑ってた。


 「必要なものは全部そろってるし、俺と一緒にいりゃあ、何の心配もねーよ。…逃げ出さない限り。


 …そりゃそうでしょうよ。天下の跡部家ですから。






 そんなこんなで、僕は跡部邸の中を案内された。

 日本の都心で、これだけの土地と設備を持っている家なんてそうざらにない。

 さすが……


























 「…お前、この三ヶ月、どこにいたんだ?」


 「さあ。」


 「さあ、じゃねぇよ。」


 「……親切な人にお世話になってましたよ。」


 お風呂にも入り終えて(すごく広かった)すぐに寝られる体制に入った僕。

 部屋にいたら跡部景吾がやってきた。


 「ま、見つけたからもう何もいわねーけどよ。」


 「それは助かりますね。余計な詮索は僕もしてほしくない。」


 「……世界のとは思えない発言だな。」


 「注目されるのは好きじゃないんですよ。」


 跡部景吾、は?、という顔をしていた。

 まあ、小さいころから注目されていたこの人にはわからないんでしょうけれど。

 僕の家だって有名だったけれど…やっぱり誰かに見られるのは好きじゃなかったな。


 「そういえば…なんで僕をフルネームで呼ぶんですか?」


 ふと、気になって聞いてみた。

 この人はそうなのだ。

 初めて連絡を取り合ったときからずっと。

 僕のことを、 と呼ぶ。

 今日なんかは、僕のパスポート情報から知った本名、アルヴィンまでつけてフルネームで呼んだ。

 日本人は、大体ファミリーネームで呼び合うという話を祖父から聞いていたから、彼には驚いた。

 僕の祖国では、親しい人はファーストネームで呼び合うけれど、初めて会った人には敬称をつけてファミリーネームで呼ぶ。

 …だから、彼が僕をフルネームで呼ぶことに興味があった。

 
 「あ?気分だ気分。」


 「…気分って……」


 「お望みなら、アルってよんでやろーか?」


 「……遠慮しておきます。」


 アル…なんて、向こうの名前はあまり好ましくない。

 日本にいる間はでいい。


 「…じゃあ…」


 と、僕は口を開いた。


 「僕も、跡部景吾ってフルネームで呼びますよ。」


 「…好きなように呼べばいいだろ。」


 「ええ。そうさせてもらいますよ。」








 僕の跡部邸での生活はこんな会話からスタートしたのであった。


 ああ、明日から学校かと思うと気が重い…

 跡部景吾と一緒じゃ、嫌でも目立つ……



















































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 ストリートテニス場の少年、跡部邸に(爆)
 都合上、本名のアルヴィンはこちらでつけさせていただきました(汗)
 まあ、アルヴィンで登録する人は滅多にいないだろう!(爆)
 この気分屋な、書いてて楽しいです。


















































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