探してるやつがいる。
日本に来た、と連絡が入って以来一度も姿をあらわさないやつ。
氷帝に編入する予定で書類や許可まで取ってあるっていうのに、人物だけが姿を現さない。
探してるやつがいる。
いけ好かないやつだけど…
一番必要なやつ。
ついこの間、野暮用でこの辺りにやってきた跡部は、広いテニスコートを見つけた。
無料のストリートテニス場だがなかなか設備が整っていて人気も上々だった。
跡部ほどの人間が、そんなテニスコートでテニスをすることはないが、跡部はそのコートが気になっていた。
別に設備とかの問題ではなく。
無料という言葉に惹かれるはずもなく。
そうではなくて。
ちょうどテニスコートからでてきた一人の少年が、あまりにも自分が探している人物に似ていたから。
黒髪で、華奢な体つき。顔は見えなかったけれど、歩く姿が探しているやつにそっくりで。
一瞬声をかけようかと、探している人物の名前を叫ぼうかと思ったが、相手は跡部のほうを見向きもせずに去っていった。
それ以来気になって仕方がなかった。
もしも自分が探している少年だとしたら……そう考えると居ても立ってもいられなくなって、翌日の土曜日には、部活の休みをいいことにそのテニス場に足を運んだ。
(この俺様がじきじきに迎えに行ってやるんだ。ったく、いったいどこに姿くらましやがったんだよ。)
休日ということもあってかテニスコートはにぎわっていた。
跡部に言わせれば、客のテニスのレベルなんてくそ食らえだが、跡部は開いているコートを探すふりをして、あの時すれ違った少年を探した。
「…あいつ……」
一番端の日陰になっているコートのベンチに、その少年は座っていた。
黒髪に黒い瞳。肌は雪のように白く…華奢な体つきをしている。
…間違いない。
その少年が自分が探している少年であると確信した跡部は小走りに走りよって、少年の前に立った。
「おい…」
愛用のラケットの整備をしていた少年に声をかける。
少年が驚いて顔を上げた。
「「…あ。」」
二人同時に声を上げた。口をあけてお互いの顔を見ているため、随分とまぬけな顔をしている。
跡部より先に我に返った少年は、いそいそと跡部の前から逃げ出そうと荷物をまとめて立ち上がったが、腕を跡部につかまれた。
「おい、こら、。にげるんじゃねぇよ。」
「…やだなぁ、逃げようなんて思ってませんよ。」
笑顔でそういう少年は荷物をまとめてすでに帰ろうとしている。
「お前、この三ヶ月、俺様がどれだけお前のこと探したと思ってるんだよ。」
「…さあ。」
「日本にくるって言うから俺様直々に空港まで迎えに行ってやったって言うのにいくら待ったってこないし。おまけに翌日から音信不通になるし。どれだけ苦労したと思ってるんだ。」
あはは…っと、苦笑した少年は観念したらしく荷物をまとめるのをやめてベンチに座りなおした。
「だってなんか、ステイ先が随分と豪華な家だって聞いたから、そんなところに拘束されたら困るなぁと…」
「あぁ?!そんな理由でこの俺様に迷惑かけたのかよ?」
跡部はご立腹。
少年はそれでも笑顔。
「どうせ、ほかの国のステイ先でもそうやって逃げてたんだろ。」
「ん〜…それはないよ。ほかの国のほうが待遇はよかったし…自由な時間もあったし…でも、跡部家っていったら日本では有名な家のひとつじゃないか。」
せっかく誰にも知られないようにいろんな国を転々としているのに、騒がれたら困るからね…と、少年は笑顔で言った。
「…なんて、マイペースなやつなんだ、お前は。」
とにかく、と跡部は続けた。足がいらだっている。
「編入手続きもとってあるんだし、最初の予定通りに行動しろって。」
「…ん〜…でも僕……」
「問答無用だぜ、。」
「…なぜそこでフルネーム……」
「大体、って名乗ってる時点で有名にならないはずがないんだってーの。」
?と首をかしげるに跡部が苛立った声で言った。
「…わずか14歳で世界のテニス選手権を総なめ。ジュニアの部から始まりシニアの部まで…すべてのトロフィーを掻っ攫った天才。」
「やだなぁ…僕、運がよかっただけですよ。それに、ジュニアの部であまりに圧勝しちゃったために特別に一般の部に出してもらった試合だし…」
「…わずか14歳で……」
「…はいはい、認めますよ。」
呆れた表情で微笑んだ少年。
本当に、わずか14歳で世界の頂点にたったとは思えないあどけなさ。
「とりあえず、帰るぞ。」
「どこに?」
「俺様んちに決まってるだろうが。ほかにどこがあるんだっての。ちゃんと用の部屋まで用意したってのに…」
「おや、それはどうもありがとう。」
「まったく……」
ぶつぶつ文句を言いながら、歩き出す少年に、ついていく。どうやら逃げ出すことはあきらめたらしい。
「でもなかなか楽しかったんですよ。」
「こっちは大変だったんだ……」
が日本にやってきた理由は、日本ならまだ名を知られていないと思ったから。
でも、跡部は知っていた。
という日本人名は祖父が日本人のクォーターだから。
それも跡部は知っていた。
日本に来るのはこれが初めてだということも。
テニスの面だけじゃなくて、学問のほうでもなかなか優秀だということも。
だから跡部はが日本に行きたいといったときに、進んでステイ先に名乗りを上げたんだ。
世界に認められた天才に興味があったから。
まさかここまで大変なことになるとは思っていなかった…と、跡部は一人苦笑するのだった。
翌日からは、氷帝学園の一員として、跡部とともに学校に通うことになった。
「…言っておきますけど、テニス部には入りませんからね?」
「……じゃあ、どうするんだよ。」
「…見学ぐらいならしてあげてもいいですよ。」
「素直じゃねーな。レギュラーになりたくないだけでテニスはやりたいんじゃねーか。」
「正式に部員登録したくないんです。」
「ああ、そうかよ…」
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…こんなもん?(爆)
跡部君とはよいペアになってくれそうな雰囲気です。
迷ったけど、氷帝に通わせることにしました。設定見えてきたかな?そのうち家族構成とかも……(爆)
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