…な〜ぅ……















 ……泣き声が聞こえた。




 それは、ちょうどお昼時。

 なんとなく、中庭を歩いていた僕が耳にした泣き声。

 振り返ってみれば、緑の芝生の中にちょこんと座る真っ白い猫の姿。

 ……僕の姿を見ても逃げる気配はまったくない。

 ちょこんと座って、じっと僕を見つめている。











 こんな猫、誰か飼っていただろうか。

 ホグワーツに猫を連れてくる生徒はいるけれど…こんなに毛並みのいい真っ白い猫を連れている生徒なんて思い浮かばない。

 いったい誰の猫だろうか…

 それとも、迷い込んできたのだろうか…?




 「あ、トム〜、いいところにいた。ねぇ、一緒にお昼食べましょうよ。」


 「いいでしょ?トム。一緒に食べましょう。」


 タイミングがいいというのか、悪いというのか。

 いつも回りについてくるスリザリンの生徒たち。中に混ざるグリフィンドールやレイブンクロー、ハッフルパフの生徒たち。


 その中の一人が、猫に気がついた。


 「…あ、猫だ。」


 おいでおいで、と猫なで声で誘うけれど、猫はぷいっと横を向いて小走りに去っていった。

 不思議な猫だった。

 僕からは逃げようとしなかったのに。

 僕の回りにいる人たちには目もくれずにどこかに行ってしまった。








































 それから、午後の授業がすんで、僕はまた中庭を通った。

 今度は教師から頼まれた仕事のためだ。


 …厄介なことをいつも押し付ける。でも、僕は優等生と偽っているから断るわけにもいかず……



 さっきの猫のことが気になって、何気なく後ろを振り返ってみた。








 …な〜ぅ…








 …いた。

 僕の後ろをついてくる真っ白い猫。

 近づいてみたけれど、逃げようとしない。

 むしろ近づいてくる。

 ……いったい、この猫は何なんだろう。

 思わず抱き上げてじっと観察してみた。

 でも…

 やっぱり見覚えのない猫だった。
















 「…君は猫を連れていたのかね?」


 頼まれた仕事を終えて教師のところに報告しに行く。

 猫は、僕の腕の中から逃げ出そうとせず、結局ここまでつれてくることになってしまった。


 「…いえ。中庭で迷っているところを見つけたのです。…でも、誰の猫だか僕には見当がつかなくて。」


 「はて…こんな毛並みの美しい白い猫など連れている生徒がいたかな……」


 やっぱりそうだ。

 こんな猫、誰も連れていない。

 じゃあ、どうしてホグワーツの中にいたんだ?


 「飼い主を探してみます。」


 「そうか…ああ、仕事のほうはありがとう。」


 「いえ…それでは、失礼します。」


 猫を抱いて、部屋を出て……

 なんとなく、猫をローブの下に隠して……寮に戻ろうと歩いていた。










 寮のすぐ近くで、あの隠し部屋に入るの姿が見えたから、なんとなく後を追って部屋の中に入った。


 「あら、ヴォルもきたの?」


 彼女は笑顔で迎えてくれた。

 とたんに、僕のローブの陰に隠れていた白い猫が勢いよく飛び出して、に飛びついた。


 「………」


 ………

 ……………


 心底驚いた顔をしては猫と僕を見つめていた。


 「…ヴォルの…猫?」


 「……いや。中庭で迷ってるところを見つけたんだけど。」


 君の猫じゃないのかい?…そう聞いたら、首を横に振っていた。


 「…誰の猫だろうね。首輪もついてないし。」


 真っ白い猫。

 僕とにはなついたけれど、ほかの生徒にはなつかなかった猫。

 …不思議な猫。



 「…君にすごくなついているみたいだよ?。」


 「そうねぇ…でも、私、猫なんて飼ってないのよ。それに見かけたことのない猫だし……君、ご主人様は誰ですか?」


 …な〜ぅ……


 誰かが変身術で化けているようでもなさそうだ。

 顔を洗ったり、毛づくろいしたりする姿は、本物の猫。



 「…ん…でもかわいいなぁ……」


 「飼っちゃえばいいじゃないか。」


 「…誰かの飼い猫かもしれないのに?」


 「飼い猫だったら、君が連れていたら返してもらいにくるだろう?もし誰も来なかったら飼い猫じゃないんだよ。」


 それに…と僕は続けた。


 「その猫、いつも僕の周りにいるうるさい生徒たちを見て逃げてったからね。飼い猫って言う確立は低いよ。」


 そっか…っと彼女は猫を抱き上げながらうなずいた。


 「…じゃあ、飼い主さんが見つかるまでね…」


 それから彼女は困った顔をした。


 「ねぇ…名前は?」


 僕に聞いてきた。

 名前……確かに名前がないと不便かもしれない。


 「…ヴォルがつけてちょうだい。見つけてきたの、ヴォルなんだもの。」


 白い猫を僕に見せながら、彼女はそういって微笑んだ。

 ……白い猫……白い猫……

 名前を考えるのが、こんなに大変だったのかと…少し苦笑した。


 彼女が僕の新しい名前を考えるときもこんなに苦労したのだろうか…















 「…………」


 「…?」


 「猫の名前だよ。」


 「………」


 くすっと彼女は微笑んだ。


 「不思議な名前を考えるのね。」


 「…その猫、不思議な猫だから、ちょうどいいだろう?」


 「ええ、そうね。」


 それから二人で、机の上で毛づくろいをする猫を見て心を和ませた。


















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 リドルは猫が好きだと思う(爆)
 蛇も似合うけどさ。猫も好きだと思うんだよね…
 白い猫は…本物の猫です。ちょっと癖のある猫だけど(笑)






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