とルデがそろって私たちの前から姿を消してから、すでに3日経った。

 普段、勝手にどこかに出かけていって、勝手に戻ってくる猫だからあまり気にしないけれど。

 さすがに3日もいないと、寂しく感じてしまう。



























 この三日間、私たちが行ったことといえば、見つけた秘密の部屋を開けるための下準備。

 魔法の研究。

 中にいる魔物を手なずける方法の練習。



















 「…どうしたの?集中力が途切れたみたいだけど。」


 「………」


 「……、少し疲れたのかい?」


 「…………」











 ぼーっとしてたら、後ろから抱きつかれた。

 なんと無防備だったんだろう。私は。

 だって、後ろから抱きつかれるなんて。普段警戒を強めているのに、リドルと二人だからといって意識が薄かった。


 「…何考えてたのさ。」


 「……ヴォル……」


 「集中力が途切れて、魔法の力が弱まったから声をかけたけれど、君、まったく反応しなかったね。一体何を考えていたのかな?」



 そういえば、と、手元を見る。


 私の水晶玉。今は何も映していない。そりゃそうね。私の意識が魔法にないから。

 私の手には杖。リドルの手にも杖。

 秘密の部屋の中を探るために私たちは魔力を使っていた。




 何冊かの書物に少しだけ書かれている秘密の部屋の内容を、ゆっくり具現化していき、頭の中に思い描く映像を水晶玉に映してみた。




 秘密の部屋へ続く道や、その途中にあるかもしれない罠の数々を。

 リドルがこうだと思ったイメージを、杖を使った魔法と通して私に伝わってきて、それを私がゆっくりと水晶玉に映していく。

 なかなかイメージが浮かばないときもあるし、イメージが浮かんだとしても、それが本当にそうであるかは分からない。

 だから、たくさんのイメージを作っては、それを具現化していって、より本物に近いイメージを作り上げようとしていた作業の最中だったのだ。







 「ごめんなさい。ちょっと…ね。」


 「何、考えてたのさ。」


 ふぅ…リドルに隠し事は無理ね。


 「…と、ルデのこと。もう3日も会ってないのよ。どこかに行ってしまったみたい。3日も会わないと少し寂しいと思わない?」


 「別に?」


 「貴方って、そういうことには関心がないのね。たちのことだから大丈夫だとは思うけれど、もし万が一のことがあったら……」


 「……別に関心がないわけじゃないよ。だけどね、やルデがいないから、僕はこうやってすぐに君に触れることができる。」


 リドルの手が私を強く抱く。

 普段は、が私のひざの上に乗っかっていたり、ルデがリドルの邪魔をしたりするから、こんなに近くになることは滅多にない。


 「…変な人ね、ヴォルは。」


 「何とでも言ってくれてかまわないさ。」


 「そう。」







 しばらくその状態が続く。

 リドルでさえも、イメージをまとめるのに少し疲れていたらしいから、ちょうどいい休み時間だわ。

 日もすでに落ち、そろそろ眠気が襲ってくる時間。


 優雅とはいえないけれど、甘いひと時である。




















































 急にばたんと扉が開いた。

 驚いて、振り返った。


 この部屋は私とリドル以外知る人のいないはずの部屋。

 一体誰?








 「……なにしてるの?」




 小さな子供だった。

 男の子、女の子、と区別ができないような、かわいらしい顔をしていて、中性的な体付きをしていた。


 「………」


 「………」



 二人で顔を見合わせて、同時にそこにいる子供を見る。

 …ではなさそうだし、ルデでもなさそうだ。


 一体この子供はどこからホグワーツに、そしてこの部屋に入り込んだんだろう?



 「…君、誰?」


 リドルが感情を押し殺した声でそう聞いた。内心は驚いていたのかもしれない。と、私は思った。


 「人に名前を聞く前にそっちが名乗るんじゃない?」


 笑顔だけど、そのこの言い方にはとげがあった。リドルが名乗りたくなさそうだったから、私がかわりに名乗った。


 「…そうね。私はよ。あなたのお名前は?」


 「こんにちは、。我はバジリスク。


 
……え?



 また、リドルと顔を見合わせた。


 「バジリスク……?秘密の部屋の?」


 「そう。我はバジリスク。訳あってこのような体でここにいるけれど。」


 にっと笑った子供に、私たちはしばらく何もいえなかった。














 バジリスクの後ろからとルデが出てきた。

 私のほうに駆け寄って、足に体を擦り付けてくる。


 「…その二匹、君に良くなついてるみたいだね。」


 私の足に擦り寄った猫を見て、それからリドルをしげしげと見つめた。


 「……君の雰囲気は…………似てる……」


 「サラザール・スリザリン、にかい?」


 「……サラザールを知ってるの?彼はどこにいるの?我は彼が帰ってくることをずっと待っているんだ。どこにいるのか知ってるのなら教えて。」


 リドルがサラザールの名を出した途端、バジリスクと名乗った少年は興奮してしゃべりだした。


 「……どこにいるって…どこかで永遠の眠りについてるはずさ。僕の母はサラザールの血を引いていた。僕もその血を受け継いでいる。」


 「サラザール、もういないの?」


 「ああ、そういうことになるね。」


 リドルの言い方がやけに冷たかった。


 「………………」


 「秘密の部屋の住人、バジリスク…か。サラザールの残した数少ない書物の中に埋もれた小さな名前…だな。本来は大きな蛇だと思っていたが。」


 「…我は訳あってこのような体をしているのだ。この体は、サラザールが魔法をかけたのだ。こっちのほうが見つかっても都合がいいからといって。」


 「……もとの姿に戻りたいか?」


 「戻りたいさ。でも、サラザールにしかこの呪文を解くことはできない。その二匹の猫についた匂いが、サラザールにそっくりだった。

 だから我はここにきたのだ。その猫を追って。そうすればサラザールに会えると思ってた……」


 しゅんとなったバジリスクは思いのほか可愛かった。


 「…戻してやろう。」


 「サラザールじゃなくちゃ、無理だ。」


 「僕はサラザールの血を引いている。」


 「でも……」


 「……だが、ここではまずいな。秘密の部屋へとしっかり案内すれば、解いてやってもいいが。」


 「…それで、サラザールが作った秘密の部屋を荒らすんだろう?そんなウソに引っかかるものか。」


 「それなら、一生そのままでいろ。」



 リドルが冷たかった。

 普段からそういう人なんですけど。

 ただ、リドルの目を見ていたら、何かを考えているような目だったから、これも作戦のうちなのかもしれないと思った。



 「……」






















 …連れて行け、秘密の部屋の中へ。
























 聞こえてきたのは、パーセルタング。

 俗に言う蛇語だ。




 リドルは蛇語が話せる。

 私は、言っている意味を理解することはできるけれど、しゃべることはできない。この辺が、リドルとの能力の違いを感じてしまうところだ。

 リドルは特別な人なんですけど…ね。



 バジリスクははっとしてリドルを見上げた。


 「………」


 リドルはなおも、パーセルタングで語りかける。

 いや、語るというよりは命令しているといったほうがいいのかもしれない。



 急にバジリスクの目に光が宿る。


 「いいよ。連れていってあげる。君が…新しいご主人だね…?」


 

 リドルが軽く私にウィンクした気がした。


 私たちはバジリスクに連れられて、秘密の部屋への道を歩く。





















































〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 バジリスクを擬人化してみました(爆)意味もなく。
 秘密の部屋に潜入させようと思いまして。
 中に入るのに、ちょっとバジリスクの力を借りたら楽そうですねぇ……

 ちなみに、人間の姿をしているバジリスクの目には人を殺す力はありません(爆)






















アクセス解析 SEO/SEO対策