ホグワーツにはたくさんの隠し部屋がある。

 私がいる部屋もそんな隠し部屋のひとつなんだろう。

 ホグワーツの中を探検していたときに偶然見つけた部屋。

 スリザリン寮のすぐ近くの扉のような壁。

 そこが魔法の入り口。

 三回ノックして、ドアノブを左に三回まわす。

 私が唯一ひとりになれる場所。






































 一人になりたいと思ったとき、私はこの部屋に来る。

 今日も回りにいる取り巻きたちをあしらうのに疲れてこの部屋にやってきた。

 中はしんと静まり返った空間だ。

 丸くて大きな机が部屋の中心にひとつ。椅子が二つ。









 図書室でトム・リドルと言葉を交わしたあの日から、なんとなく気になるあの人。

 それは、周りの生徒たちが私に持ちかける恋の相談とはまったく違うけれど、彼のことをもっとよく知りたいと思う。




 時々話しかけようと思うのだけれど、私の周りにはいつも人がいっぱいいて、とてもリドルに話しかけるような状態ではない。

 彼だって、私のことを意識してはいるみたいだけれど、周りの人のせいで身動きひとつ取れないでいる。


 瞳は重なるのに、お互いの距離は遠くなる気がする。



 「…もっとちゃんと話したいのに…」


 つぶやいてみたりする。


 「誰と?」


 「誰って…容姿端麗、成績優秀、非の打ち所のない美青年…トム・リドルよ………………」









 ん?

 ちょっと待って。この部屋って私しかいなかったはずよね。

 どうして私のつぶやきに返事が返ってくるの?

 …ぞっとした。

 振り返るのが怖かった。


 「へぇ…僕のこと、そんな風に思ってるんだ…」


 


 驚いて振り返った。


 「!……驚かさないでよ。」


 「別に驚かしたわけじゃないよ?君がこの部屋に入っていくのが見えたから僕も入ってきただけで…」


 目の前にいたのはトム・リドル、その人。

 リドルは私の向かい側の椅子に座った。


 「入ってきたって…この部屋に入るには特殊な方法が必要なはずよ?」


 「…特殊な方法?そんなものがあったのかい?僕はただ、中に入れてくれないと消滅させるよ?って言っただけだけど。」


 …時々、あなたのその黒い微笑が怖くなります、私。


 「何でため息つくのさ。」


 「…あなたってすごいのね。」


 くすくすと微笑んでそういった。無論、彼にはその言葉の真意なんてわかっていないのだろうけど。


 「せっかく一人になりたいと思ってここに来たのに、思わぬお客さんが来たものだわ。」


 「迷惑なら僕帰るけど?」


 「いいわ。紅茶でいい?私がよく使うから何でも準備してあるのよ。それに……」


 小さくささやいた。


 「もう少し詳しく、あなたのことが知りたかったんですもの。」


 「それはいいタイミングだね。僕も君のことが知りたかった。」







 あったかい紅茶でのティータイム。

 普段は一人だけど、今日は思わぬお客様。

 一人で飲む紅茶はおいしいけれど、トム・リドルとともに闇について、マグルについて本音を言いながら飲む紅茶もおいしいかもしれない。











 「ちょうどいい場所だね、ここ。」


 「なにが?」


 「二人っきりになるには。」


 「……」


 「…こうやって本音で話し合える人なんてホグワーツにいないから。」


 「そういう意味なら、そうね。談話室や図書室だといやでも周りに人が集まってくるから、話す暇なんてないものね。」


 「…ちょうどいい場所になりそうだね。」


 リドルは私の頬に口付けしながらささやいた。










 二人の密会にはちょうどいい場所になるね…









 と。

 きっと顔が真っ赤になっていたに違いない。

 驚いて、何も言うことができなくなった私に微笑みながら、リドルは部屋を出て行った。


 「ね。また一緒にお茶しようね、。」


 ただただ、目を白黒させていた。

















 昨日までは一人になれる素敵な場所。

 でも今日からここは、本音で話ができる唯一の場所。

 二人の密会の場所…になったみたい。



 なんとなく、そういうのもいいかなって思った………





















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 ホグワーツにはいろんな部屋があると思う。これもそのひとつ。
 リドルは突然な行動するのが好き。
 それでいいじゃない。いつも優等生なんだから(爆)



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