うわさは聞いていたの。その姿を見ることだって何度もあったわ。
でも、あなたになんて、まったく興味なかったのよ。
今日までは。
一人が好き。
一人で好きな本を読んだり、気になることを書き綴ったりするのが好き。
だから私はいつも一人で図書室にいる。
一番端の角にある席に座る。そこからだと、本棚に隠れて私の姿を入り口から見つけることはできない。
毎日うるさく付きまとってくる男子生徒や女子生徒を撒くのにちょうどよい場所。
今日も読みかけの本と羊皮紙と羽ペンを手にいつもの場所に座る……
予定だったの。
でも、今日は先客がいたわ。
机の上には何冊もの本。一番上の本は普通の魔法史書だけれど…間にある本からはただならぬ空気を感じた。
…闇の魔術に関する本。
私が目の前に立っていることになんて関心がないらしくて、羊皮紙に羽ペンで何かを綴っている。
時々開いている本に目を通すけれど、私のほうには見向きもしない。
漆黒の髪に、真っ赤な瞳。背が高くて整った顔立ちをしている。
スリザリン寮の有名人。トム・M・リドル。
私が成績で唯一勝てない相手。
容姿端麗、成績優秀。おまけに寮に関係なく人にやさしく接する。…私が大嫌いな人種だった。
話には聞いていたけれど。目が合うことも何度もあったけれど。興味がなかったの。
そのうち、彼はやっと私の存在に気がついたのか顔を上げた。紅い瞳でまっすぐに見つめられた。貫かれたような感じがする。
「…君、さっきからそこにいるみたいだけど、僕に何か用?」
「……いいえ。用はないわ。ただ、いつも私が座る席に先客がいたから驚いただけよ。」
「ああ、ごめん。」
…彼の作り笑いにぞっとする。心から笑っているわけではない。
私と同じ。
「…いいのよ。ここに座ってもいいかしら。」
「ああ。いいよ。」
嫌いだったのよ。彼みたいな人間が。善人が。
だけど…どうも違うみたい。
特殊なインクで書かれたその羊皮紙に何が書いてあるのか、察しはつく。
なぜ、闇の魔術に関する本を読んでいるのか…そんなことわかりきった話だ。
私は彼の向かいに座って、手にしていた本を机の上に置いた。
その本をチラッと見て、彼は心底驚いた顔をしていた。
「……君……」
「…あなたと同類ね。私は。」
それから二人同時に笑った。
心から笑った。
「君、名前は?」
「。・よ。」
「…トム・リドルだ。まさかホグワーツに僕と同類がいるとは思わなかった。」
「同感だわ。こんな場所で何をしているのかと思ったら…あなたって不思議な人ね。」
「ここなら、ほかの生徒に騒がれない。勉強している風に見えるから教師の目もごまかせるしね。」
ほら。
私とおんなじ考えだわ。
私と同じ。
「…率直に聞くよ、。……君は…マグルをどう思う?」
本当に率直に聞くのね…
「…嫌いよ。吐き気がするほどに。」
「僕たち、よい友達になれそうだ。」
「本当に…」
それから私たちは握手を交わした。
興味はなかったの。
善人だと思い込んでいたから。
人当たりのいい、成績優秀な、どこにも非の打ち所のないただの青年だと思っていたの。
だから、興味がなかった。
でも……
どうやらそれは間違いだったわ。
彼の中には私と同じ闇が眠ってる。
彼の中に闇を見つけた。
私と一緒だって気づいたのよ。善人ぶってるだけだった。
興味がなかったの。
今日までは。
今までは。
あなたと言葉を交わすまでは。
でも今は、あなたのことがもっと知りたい…………
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原作沿い少年夢の主人公のお母さん設定(爆)
若いころ、リドルと出会うときの話かな。
ちなみに、彼女は20歳で体の成長を止めているので、ずっと20歳のまま(爆)
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