『落ちる…落ちる………散りゆく若葉。落ちる…落ちる……若葉が散りゆく…運命か、それとも空想か…』






 夢のお告げがあったんだ。

 …具体的になんて何もない。

 ただ、こんな言葉だけ、そして、一枚の若葉が暗闇の中、地の底の水溜りへと落ちていく夢。



 気になっていたんだ。

 なにか不吉な予感がしたんだ。





 ……まさか……ネビルが落ちるなんて思ってもいなかったんだ。





















 四メートル……六メートル……高い。

 暴走した箒を止められる魔力なんて、まだネビルが持っているはずがなくて。

 マダム・フーチだって呆然と眺めているしかなかった。

 ネビルの顔は真っ青で……




 ほら、箒がたまらなくなってネビルを振り落とした。

 ネビルの腕は箒にぶら下がっていられるほど力がない。

 ……落ちる。

 ………落ちる。



 頭の中で、の声が渦を撒いていた。





 『…今自分が何をすべきか…なんて…本当に何か起こったときにはとっさに動くんじゃないのか?』





 ………

 自分でも…どうしてそんなことをする気になったのかなんて、わからない。

 ただ、しなければいけないと思ったのかもしれない。



 僕は、杖を取り出して簡単な呪文を唱えた。

 ……頼む、間に合ってくれ。


 ネビルの体が地面にぶつかるのが先か、僕の魔法がネビルを包むのが先か。

 幸い、僕が魔法を使ったことにはまだ誰も気づいていなかった。


 祈るような気持ちで自分の放った魔法を見つめていた。











 ………ポキッ………














 そんな音が聞こえた。

 ネビルの体は僕の魔法に包まれて、地面に打ち付けられることはなかったけれど、ネビルは落ちるときに手を突き出していたらしくて、手のほうが魔法より先に地面についてしまったらしい。

 体は無傷だったけれど、手が折れてしまったようだ。

 ……間に合わなくて…ごめん。



 もう少し早く気がつくべきだった…と、後悔した。



































 ネビルが落ちる。

 そのとき、僕は見たんだ。

 がとっさに杖を取り出して何か呪文を唱えるところを。

 周りの叫び声がうるさくて、何の呪文を唱えたのかなんてわからなかったけれど…

 ネビルが地面にたたきつけられる前にその呪文がネビルを包み込んだ。

 そっとネビルを地面の上に寝かせて淡く光っていた魔法がゆっくり消えた。

 ……落ちる時に手を突き出していたネビルの手首だけは折れてしまったみたいだけど。

 本来あの高さから落ちたら手首の骨折だけじゃすまないはずだ。

 …が、ネビルを助けた。

 グリフィンドール生なんか、助ける必要がない。特にネビルはいつもドジな劣等生なのだから。

 ……でもきっと、はそんなことお構いなしに助けたんだと思う。

 寮とか、人とか関係なくて…ただ、危ないと思ったから魔法を唱えた。それだけなんだと思う。

















 「手首が折れてるわ。」







 真っ青な顔のマダム・フーチがネビルの上にかがみこんだ。

 は思いつめた顔をして、手にしていた杖をしまうこともせずにその状況を眺めていた。

 マダム・フーチはネビルを立たせると、ほかの生徒のほうに向き直った。


 「私がこの子を医務室に連れて行きますから、その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにしておいて置くように。さもないと、クディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出て行ってもらいますよ。」


 涙でぐちゃぐちゃの顔をしたネビルが手首を押さえて、ふらふらになりながら歩いていくのが見えた。


 「………僕……」


 の体が震えていた。

 やさしいのことだから、自分が魔法を使うのが遅かったって…そう思っているだろう。

 俺はそっと、の体に自分の体を摺り寄せた。

 はかがんで、俺に寄りかかった。


 「…!」


 ハーマイオニーがの元にかけてきた。


 「…あなた、何をしたの?あなたの魔法よね、ネビルを助けたの。私見てたのよ。あなたが杖を取り出して魔法を使うところ。」


 「……ハーマイオニー……」


 「すごいじゃない!あんな魔法、一年生の教科書には載っていないわよ。どこで覚えたの?」


 ハーマイオニーは興奮して(でも声は小さく)に話しかけた。

 でもは思いつめた表情で返事をするだけだった。

 …別にのせいじゃないのに。


 「…ごめん、ハーマイオニー…後で話すから、今はみんなに黙っていてくれるかい?」


 「あ、うん。絶対よ。後で教えてね!」


 「うん。」


 そのとき、大きな笑い声が聞こえた。


 「あいつの顔を見たか?あの大まぬけの。」


 マルフォイの声だった。ほかのスリザリン寮生たちもはやし立てた。

 は黙って…俺とを見つめていた。





 そのうちにマルフォイがネビルの思い出し玉を拾って高々とさし上げた。

 それに怒ったのか、ハリーの声が聞こえて、一触即発のような雰囲気になった。

 今までおしゃべりをしていた周りの子供たちが一斉にハリーとマルフォイを見た。



 「…、立てるか?」


 「…うん。大丈夫さ。」


 「ドラコと、ハリーが危うい雰囲気になってる。」


 「…え?」


 が立ち上がって(に寄りかかりながら)ハリーとマルフォイを見たとき、ハーマイオニーのかなりき声を無視してハリーが箒で飛び立つところだった。


 「…ハリーって…飛行術の才能があるって思ってた…」


 が少し笑顔になった。


 「あれじゃ、ドラコの負けだな。」


 「顔が引きつってるね、ドラコ。それに…ハリーの箒捌きが上手すぎるよ。」


 「本当だ。」




 空中でどんな会話があったのかは知れないが、マルフォイが思いっきり思い出し玉を投げたのが見えた。

 ハリーは一直線に急降下し、見る見るスピードを上げて球と競争していた。地面すれすれのところで球をつかんだ。




 
「ハリー・ポッター……」



 …厳格な教師、マクゴガナル教授が走ってきた。

 ロンやほかの子がハリーをかばおうとしたけど、先生はハリーを連れて行ってしまった。












 「…最年少シーカーの誕生かな?」


 「見事な箒捌きだったね。」



































 …夕食時。

 でも、は部屋にこもってた。

 は食事をしに行ったけど…俺とニトとは部屋にこもってた。


 「…食欲ないんだ。」


 が食事にいかないのかと誘ったときに、そういっているのが聞こえた。


 「そうか。」


 は余計な詮索をしなかった。









 「…ねぇ……僕…あの時本当はどうしていればよかったんだろう?もっと早くに呪文を唱えるべきだった?それとも…予言どおりに彼が落ちるのを見ていればよかった?



































 の部屋に白いふくろうが二匹飛んできたのはそれからすぐのことだった。































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 …すっごいシリアスだ…(汗)
 でも、はやさしいから思いつめちゃうんだよ…
 黒くてスリザリン生なところもあるけど、やっぱりやさしいのです(笑)







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