汽車を降りたらそこは暗いプラットホームだった。
巨人に連れられて険しくて狭い小道を降りていくと、大きな黒い湖のほとりに出た。
向こう岸に高い山がそびえ、その鉄片に壮大な城が見えた。…ホグワーツだ。
岸辺につながれた小船に四人ずつ乗って、俺たちはホグワーツの地下の船着場に到着した。
それから、背の高い黒髪の厳格な魔女が現れた。その人に連れられて俺たちは石畳のホールの脇にある小部屋に詰め込まれた。
…狭いのなんのって。窮屈でしかたなかった。
ホールに入ると、組み分けの儀式が行われた。
ひどく古ぼけた帽子を、名前を呼ばれた順にかぶっていくらしい。その帽子が寮を決める。
汽車の中で話をしたハリーとロンはグリフィンドールに組み分けされた。
二人とも嬉しそうだったし、よかったなぁって思った。
僕の番はなかなか回ってこない。
とうとう、最後の一人になった。
生徒が組み分けされていくにつれて僕の隣にいるの姿が、ホグワーツ在校生の目に映るようになった。
今は周りに誰もいないものだから、みんなからの姿が丸見えで、ざわめきがおこっている。
はそのざわめきを鬱陶しそうに耳をぴくぴくさせながら聞いていた。
「。・。」
マクゴガナル教授が僕の名前を呼んだ。
僕が入る寮なんて決まっているのだろうけれど…それでも組み分けの儀式は行わなくてはならないから、僕はスツールに腰掛ける。
マクゴガナル教授が僕の頭に帽子をのせる。
あたりが急に暗くなった。
そして、聞こえる不思議な声。
「…おや、君は……。」
「こんにちは、帽子さん。」
「…う〜む。君にはたくさんの力が受け継がれている。それを最大限に生かす寮は……難しいのう。」
「僕が入る寮なんてすでに決まっているんじゃないんですか?」
「…難しい。血筋とかの問題で寮を決めているわけではないのじゃよ。う〜む……」
二分くらい時間が経った気がした。チラッと足元にいるを見れば大きなあくびをしているではないか。
教授の足がいらいらとしているのがよくわかった。
「…あの、早く決めてください。僕、飽きてきました。」
「…う〜む…」
帽子はなおも悩み続けていた。つまらない。飽きてきた。人を待たすのもいい加減にしてほしいと思ってしまう。
僕が入る寮なんてもう決まっているはずなのに。この帽子はいったい何を悩んでいるのだろうか。
「…早く決めてくれないと、燃やしますよ?」
「…!…じゃが、君はどの寮に入っても成功すると確信できるから、随分と迷うのだが…」
「早くしてくださいね。そうしないと、水路の中に沈めますよ?」
「……!!…いいじゃろう。その狡猾さ…君の寮は……スリザリン!!」
帽子を脱いで、歓声が上がったスリザリン席へと向かう。…歓声の中に奇声や文句も混じっていた気がしたけれど…
特に、グリフィンドール寮の、例の双子の座っている席あたりからひどい罵声が聞こえてきた気がした…
はやっぱりスリザリンになった。
イリアもあいつもスリザリン寮出身だ。もスリザリンなることは俺が確信していたのだが、思いのほか決定までに時間がかかった。
いったいあの帽子をかぶったときに、何があったのだろう。気になるところだ。
スリザリン席に腰掛けたいつきの足元に俺は座った。
見渡す限り黒いローブを着た集団で、少し気分が悪くなった。
生徒がちゃんと黒いローブを身にまとっているというのに、ホグワーツの教師たちは一人ひとり個性のあるローブを身にまとっていた。
きらきら輝いているひげの長い老人もいて、どうも場の空気が読めない人のようだった。似合ってないし。
(ハリーやロンと違う寮になったのは少し寂しいけれど、しょうがないかな。スリザリン寮は随分と個性のある子ばかりのようだし、楽しそうだよ。)
と、がささやいていた。
「…これ、君のペットかい?」
そういう声が聞こえた。
「あ、うん、そうだけど。ああ、ごめん。鬣が足に引っかかってたみたいだね。、僕の後ろに移動してくれるかい?」
俺の鬣が邪魔をしていたらしい。
に話しかけたのはの隣の席の男の子で、よりも少し背の高い、整った顔立ちの少年だった。
「随分珍しいペットを連れてきたんだな。」
「みんなそういうんだ。僕にとっては普通なんだけどね。君はトモダチを連れてきたかい?」
「…僕は、猫を連れてきたよ。夜と同じ色をした猫をね。」
「へぇ…ところで、猫ってどんな動物だい?僕、よく知らないんだけど。もしよければ後で見せてくれないかな。僕、・。」
「君、猫を知らないのかい?不思議だな…後でつれてきてあげるよ。僕は。・だ。」
はその少年と握手を交わしていた。
みんなが食事を終えたころに、場の空気を読めない衣装を着た老人が立ち上がって諸注意をした。
森に入ってはいけない、だとか、廊下で魔法を使わないで…だとか、死にたくなかったら四階の右側の廊下に入ってはいけない、だとか。
二言三言というには随分長い気がした。
「…長いね。」
「…そうだね。そろそろ眠たくなってきたよ。」
頭の上でとの会話が聞こえていた。
俺はばっちり寝る体制に入ってうとうとしていた。
それも、急に流れた大きなたくさんの歌声に阻まれたのだが。
何だ、この詩は。それぞれがそれぞれのリズムで好きなように、おかしな詩の歌を歌っている。
いったい誰が考えたのか知らないが、よく言えば個性的な、悪く言えば、なんじゃこりゃ、という詩だった。
そんなばらばらの曲で、なぜ場の空気を読めない老人が涙を流すのか、俺はよくわからなかった。
それから就寝時間だといって生徒たちは監督生についてそれぞれの寮へと向かった。
ホグワーツは想像以上に広かった。
こんなに広いとは思っていなかったし、寮につくまでにも随分と時間がかかった。
なんていうか…さすが魔法学校だなぁと思ったほどだ。
肖像画の人物たちは生徒を見てささやいたり、指差したりしている。
はとのおしゃべりに夢中でそんなこと気にも留めていない様子だったけれど。
イリアの家の肖像画は動かないから、不思議な感じがした。
「男子寮はあっち。女子はこっち。荷物はもう運び込まれているはずだからね。」
監督生の声が聞こえた気がした。
はとしゃべり続けながら監督生の指示に従って男子寮へと入っていった。
「ルームメイトになるとは思わなかったな。」
「そうだね。しかも二人で使えるみたいだし。すごく幸運かもしれないね、僕たち。」
「ああ。そういえば、猫が見たいといっていたっけ。」
と同室になった・とかいうやつは、が杖を買った店で屋根の上から大量に降ってきた動物を抱えてきた。
「ほら、これが猫だよ。」
そいつはの髪と同じような漆黒の毛で、尾が長く、闇にまぎれてしまいそうだった。二つの目だけがらんらんと光る。
どこかしら俺に似ているのかもしれない。少し共感を覚えた。
はその猫を抱かせてもらって喜んでいた。
「へぇ…小さいんだね。かわいい。」
「ニトって名なんだ。まだ子猫だから小さいけれど、そのうち大きくなるさ。…大きくなるといってものトモダチほどではないけれど。」
「こんにちは、ニト。僕はだよ。」
しばらく二人はニトや俺について話をしていた。
「それにしても大きいな。触っても平気かい?」
「うん。僕が命令しない限り人を襲うことはないからさ。」
それからが俺の頭をなでた。
のトモダチのニトは、俺の尻尾に興味を持ったらしく、俺が尻尾を動かすたびに飛びかかろうとする。
俺にもいい友達ができるかなと期待し始めたころだった。
「さ、寝ようか。、こっちにおいで。」
「…ニト。いつまでもの背中に乗っているんじゃないよ。君はこっちだ。」
ホグワーツのベッドはふかふかしていた。
俺は疲れていたせいもあったのか、よりも早く眠ってしまったようだった。
眠る前に聞いた言葉は、の言葉で。
「僕がすべきこと……って…なんだろうね………ああ、、もう寝ちゃったのかい?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
はスリザリンですよ。いつも笑顔ですけど。
血は争えないですから(爆)
でも…ハリーたちとかかわりがあまりなくなるかもしれないなぁ……
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