ハリーたちはホグワーツの管理人、アーガス・フィルチにいい感情を抱いていない。

 彼はなにかホグワーツに問題が起きるとすぐにやってきて、ぶつぶつと文句を言った挙句に処罰をする。

 双子なんかはいつも彼をからかっているそうだ。


 俺自身、あいつの連れている猫、ミセス・ノリスにはほとほと困っている。

 俺は猫科の動物であり、ニトともそうだが、同じ種類の動物とは完全にとはいえないが意思が通じる。

 つまり、ミセス・ノリスは普段から俺を監視する。

 ミセス・ノリスにしてみれば、自分に似ている、でもすごく大きな動物が怖く、普段から監視して行動を把握していないと恐ろしいらしい。

 ミセス・ノリスに出会った途端、恐怖の目で見られるのは結構困る。


 その恐怖のまなざしを、ハリーたちは鋭く自分たちのことを観察しているいやな目だ…というのだが。





















 だが、俺やはフィルチ本人にたいしてはそんなに悪い感情を抱いてはいない。

 むしろ、城の中をいつも清潔に保っていたり、いろいろな事務をこなしているすごいやつだと思っている。

 いつも腹を立てているのには少し気が引けるが。
























 ホグワーツに入って一年。は何かしらフィルチと連絡を取り合っていたりする。

 フィルチに気に入られるような態度をとり、それに優等生ということもあってか、のイメージはフィルチの中でもそんなに悪いものではないようだ。






 だからこうやって、フィルチの事務室に許可なく立ち入ることを許されているわけなのだが。


 フィルチの事務室は、なるべく生徒たちが近寄らない場所で、それは今のにとって都合がいいことだといっていた。

 またいろいろと考えることが多くなったんだ。

 は暇を見つけては、魔法の石と水晶玉を持ってフィルチの部屋にやってくる。


 薄汚い窓のない部屋。低い天井からぶら下がった石油ランプがひとつ、部屋を照らしている。

 壁に沿って並んでいる木製のファイル・キャビネットにはフィルチが処罰したせいと一人ひとりの細かな内容が記されている。


 …この前、フィルチが得意げに話しているのを聞いた。




 今日もはこの部屋にやってきた。

 実はこの部屋には、ひとつ埋もれたファイルと呼ばれるファイルがある。

 今ではもう処罰される生徒の数のほうが圧倒的に多くなったので、ファイル・キャビネットの中は処罰の記録でいっぱいだ。

 だが、ひとつ。

 今、が手にしているファイルには歴代の首席、そしてホグワーツに貢献した数少ない生徒の名が綺麗に刻まれいてるのだ。



 ……その中のひとつのページを開く。

 五十年前のページ。

 ホグワーツと区別功労賞を受賞した、トム・マールヴォロ・リドル の名前が刻まれている。



 「……さて、今日もはじめるか。」



 がそのページを開いたまま、意識を集中させ魔力を増大させる。

 俺はの横に伏せて待っている。


 淡い光を放って、トム・マールヴォロ・リドル の名前が浮き上がる。

 の水晶も青い光を放ち始め、周りにばら撒いた魔法石たちはぷかぷかと舞いはじめる。


 いつ見てもすごく神秘的な光景なのだ。


 「…夢見し時は今何処。秘められし想いを解き放つは、我の力に肖らん。そなたに秘められし想い出を、今ここに解き放たん……」


 それはいつ聞いても綺麗だと思える言葉。


 急に光っていた名前が強く光を放ち、そして……



 








 ばたんっ










 
 急に扉が開いた。

 びっくりしての集中力が途切れ、それと同時に浮かび上がっていた名前の文字がただの文字になり、

 魔法石が床にたたきつけられるようなカタチでふってきた。

 俺の上にもふってきた。

 けど、とっさにが魔法をかけてくれたので俺は無事だった。

 石というだけあって、当たると痛いから。

 は優しいな。




 「…、きていたのかい。悪いことをしたな。


 「いいえ、大丈夫ですよ。おや、ハリー、どうしたんだい?そんなにどろどろで。」


 は水晶玉と魔法石をてきぱきと片付けながらそういって微笑んだ。


 …あと少しでいろいろわかるところだったのにね…

 と、寂しそうにつぶやいていたのを俺は聞いたが、それはハリーやフィルチの耳には届かなかったようだ。




 「名前……ハリー・ポッター……罪状……


 「ほんのちょっぴりの泥です!」


 ハリーの声が聞こえた。

 でも、ハリーはどろどろで、ほんのちょっとの泥とは言いがたい。


 「そりゃ、お前さんにはちょっぴりの泥でござんしょうよ。だけどこっちは一時間も余分に床をこすらなけりゃならないんだ!」


 フィルチが叫んだ。 


 がそっと立ち上がり、ハリーの耳元でささやいていた。


 「大丈夫だよ。」


 と。

 ハリーはそれでも少し心配そうな面持ちでフィルチをじっと見つめていた。












 ハリーの処罰をフィルチが紙に記入しようとしたまさにそのとき、天井の上でバーンと大きな音がして、石油ランプがカタカタ揺れた。


 「ピーブスめ!」


 フィルチがうなり声を上げて、事務室を出て行った。




 「……行っちゃった。」


 「今日はいいタイミングだったね、ピーブス。」


 「ほんと。…そういえば、何してたの?」


 「ん?」


 「ほら、だって、魔法を使ってたみたいじゃないか。それに、ここってあんまり生徒が近寄らない場所なのによく入ることができるね。

 フィルチにも気に入られているみたいだし。」


 「ああ、なんでもないよ。ここって生徒が嫌って近づかないだろう?だから、集中したいときはもってこいじゃないか。」


 それだけだよ、と、は微笑んだ。

 それ以上何も聞くな、と、ハリーに無言で訴えているような笑いでもあって、ハリーもそうなんだ、とうなずいただけで余計な詮索はしなかった。





 それじゃ、僕、そろそろ行くよ。


 がそういって部屋を出て行った。

 ハリーだけ、その部屋に残された。



















































 「…あと少しだったけど…まあ、しょうがないね。」


 が寂しそうな声を上げた。


 「あと少しで手がかりがつかめるところだったのに……さすがに僕が直接グリフィンドール塔のジニーを訪ねるわけにも行かないし……」


 は寂しそうな笑顔だった。



 「まあ、いいや。そのうち答えは見つかるだろうから。今焦ってもどうしようもないことだしね。」












































 寮に戻ったらニトが飛びついてきた。

 どうやらフィルチの部屋の魚くさい匂いが俺の体にもついていたらしく、俺が魚を持っているのと勘違いしたみたいだった。


 「…魚くさい。


 「…ああ、フィルチの事務室にいたからかな……?」


 「………あんなところにいたのか。」


 「まあ、あんまり綺麗な場所とはいえないね。暗いし。でも、静かだったよ。」


 はタオルと着替えをに投げて渡した。


 「風呂に行こう。この部屋にまでそのにおいがつく前に。」


 「まあ、匂いがついたところで魔法で取り除くことはできるけど。」


 「それはそうだが、そういう問題ではないからな。さ、ニト、いくぞ。」


 俺にじゃれ付くニトをが抱いた。


 「、おいで。」


 が笑顔で俺を呼んだ。




















 お風呂に入ってに綺麗に体を洗ってもらったら、魚のにおいは取れた。


 けど、お風呂に入っている間中、がいろいろ考え事をしておぼれそうになっていて。

 それを助けるのが大変だった。




















































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 フィルチの部屋で(爆)
 まあ、優等生だしフィルチを嫌がってはいないと。
 むしろ、有効活用しているとしか言いようがありませんね(爆)























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