おそらく、賢者の石が守られているであろう部屋にいたのは、スネイプでも、ヴォルデモートでもなかった。


 ……それは、僕の身近にいる人だった。



 クィレル。



 いや、ヴォルデモートもその場にいた。

 クィレルの頭の反対側に顔だけが浮き出ていた。


 影と霞に過ぎない…誰かの体を借りて、初めて形になることができる……


 ……そういっていた。

 怖くて、足がすくんだ。




 「胸を打たれるねぇ……わしはいつも勇気を称える…そうだ、小僧、お前の両親は勇敢だった……わしはまず父親を殺した。勇敢に戦ったがね。」


 低く響く、いやな声だった。

 僕の傷が少しうずいた。

 ぎゅっとこぶしを握り締めた。


 賢者の石だけは渡せないと誓ったんだ。



 「………母親の死を無駄にしたくなかったら、さあ『石』をよこせ!」


 「やるもんか!」


 …自分でもびっくりした。

 恐怖で足がすくんでいたはずだったのに、なぜか大きな声がでた。

 ぎゅっとこぶしを握り締めて、僕は駆け出した。

 石だけは渡せない…そう思ったんだ。

 炎の扉だろうがなんだろうが、もうどうでもよかった。とりあえず走った。


 「捕まえろ!」


 ヴォルデモートが叫んだ。



 痛い!!




 クィレルの手が僕の手首をしっかりとつかむのを感じた。

 別に…それが痛かったわけじゃなくて、触られた瞬間に針で刺すような鋭い痛みが額の傷跡を貫いた。

 痛くて頭が割れそうだった。



 痛くて…

 痛くて…

 もがいた。



 額の痛みは和らいだ。

 なぜってクィレルが僕の手首を離したから。


 クィレルの手は火ぶくれができていた。苦痛に体を丸め自分の指を見るクィレル……




 そうだ…クィレルの体にしがみつけば……

 クィレルは僕の肌に直接触れられないみたいだ。


 思いっきり抱きついて離さなかった。


 悲鳴がうるさかった。



 でも…額の傷の痛みもすごくって、僕がクィレルにしがみつく力が弱くなっていくのがよくわかった。





















 そのときだった。


 炎の扉を潜り抜けて、知っている声が飛び込んできたのは。




















































 「父上!!」


















































 炎の扉をくぐって、目の前にクィレルとハリーの姿が見えるなり、は叫んだ。

 クィレルの頭には、奇妙な顔があった。


 ……変わり果てた…あいつの顔。



 「…!!」



 どろどろ、ぼろぼろになったハリーがに駆け寄った。

 はすごい真剣な顔をして、ハリーには目もくれなかったけど、ハリーを抱きしめた。


 「大丈夫かい、ハリー…」


 「うん……?」


 ごめん。

 はそういって、ハリーを放した。


 「君のことも心配だ。でも、僕は…僕がここにきた理由は、君を助けるためだけじゃないんだ。」


 呆然とその場に腰を下ろしてしまったハリーはそのままで、は苦しみもがいているクィレルに近寄った。



 ……性格にはクィレルの頭に寄生しているあいつのところに。





 「…無残な姿ですね、父上。」


 「……か。」


 「母上が見たらなんていうでしょうか。」


 「…イリアは…元気か?」


 「……ええ、とっても。いつも父上のことを幸せそうに話してくれますよ。僕はそれを聞いて育ちました。」



 そうか…と、あいつらしくもない顔でを見つめた。


 「…父上でしょう?これを送ってくださったのは。」


 「……………」


 ふぅ…と、がため息をついた。

 ぎゅっと俺の体を抱きながら話す。


 「…も大きくなったと思いませんか?」


 「………お前はまだ覚醒するはずではなかった…」


 「ええ、聞いています。仕方のないことだったんでしょう?」


 悲しそうに微笑むの顔は今にも泣き出しそうでくしゃくしゃだった。


 もがいて苦しんでいるクィレルの声が響いていた。

 ハリーのほうを見たら、意識を失っていた。

 でも、この二人にはそんなことはどうでもよかったらしい。


 ……変わり果ててはいたけれど、あいつはあいつだった。


 あいつは今、じかに俺に触れられない。

 悲しい目で俺を見て、何かささやいた。


 それが何だったのか、俺はよく聞き取れなかったけど…

 たぶん、昔俺に魔力をくれたときと同じように…何かしたんだとそう思った。




 「…もう…いい。」


 「……そうですか。」


 「…、お前に…世界を……」


 ふっ…と、ヴォルデモートの…あいつの姿が消えた。

 クィレルが…倒れていた。

 俺の体が淡く光り輝いていた。



 ……が…涙を流しているのを俺は初めて見た。

 ぺろっとの涙をなめてやった。


 は…俺の体に顔をうずめて泣いていた。




















































 「ちーっとばかり遅かったかの?」















 声が響いた。

 ダンブルドア校長だった。

 いつものひげの長いスタイルも一緒だ。

 は涙をぬぐって顔を上げた。


 「…そうですね。もう少し早く来ていたらヴォルデモートを倒せたかもしれないのに……」


 でも、はダンブルドアのほうを見はしなかった。


 「そうか…」


 「…ハリーは無事です。気を失ってはいますが……でも、クィレル先生は……」


 が首を横に振った。


 ……あいつがこの場から消えるのに、クィレルの体に残っていたわずかばかりの魔力と、の体に収まりきらない魔力を使ったことは明白だった。

 あいつ一人の力じゃ、この場から消えて逃げるなんてことは不可能だから…

 だから、余計、悲しくなった。



 「さて、じゃあ、マダム・ポンフリーのところに行くとするかの。」



 ダンブルドアが呪文を唱えたら、俺ととハリーの体が宙に浮いた。

 ダンブルドアはちゃっかりハリーから『賢者の石』を取っていた。


 「ゆっくり寝るといい。悩み事は寝て解消するのが一番じゃよ…」





























































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 シリアスだ…(汗)
 こういう設定だったんです、うちの夢主、は……
 あはは(汗)
 細かい設定はいろいろあるんですよ。
 そのうち、ちゃんと説明しますww
 矛盾がないように微妙に考えたし(爆)













































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