もう一匹、ケンタウルスが現れた。

 真っ黒な髪と胴体で荒々しい感じのするケンタウルスだった。


 「やあ、ベイン。元気かね?」


 「こんばんは。ハグリッド、あなたも元気ですか。」


 ケンタウルスは言葉遣いだけは見た目と違って綺麗だった。

 は相変わらずケンタウルスを見つめていて、時々俺の体に寄りかかる。

 …たぶん眠いんだろうと思う。夜に弱い体質だから。


 「ロナンにも聞いたんだが、最近この辺で何かおかしなものをみんかったか?」


 ハグリッドはロナンに聞いたことをベインにも聞いた。

 ……そんなこと聞いたって答えてくれない気がしたけれど、言わなかった。


 「今夜は火星が明るい。


 やっぱり…

 ベインの返事はそれだけだった。

 それからと俺を交互に見て、不思議な目をした。


 「もうそれは聞いた。さーて、もしお二人さんのどっちかでも何か気がついたら俺に知らせてくれ。頼む。さあ、俺たちは行こうか。」


 進もうとするハグリッドをロナンが呼び止めた。


 「…この子を借りてもいいですか、ハグリッド。危険な目にはあわせないと約束します。」


 のことだ。

 ハグリッドはう〜んとうなって、それからに聞いた。

 もケンタウルスと一緒にいたいといったから、俺とはケンタウルスと共に残ることになった。


 だんだん、ハリーたちの姿が小さくなっていく。

 が笑顔で手を振っていた。

 俺は大きなあくびをひとつ。

 眠くてしょうがなかった。








 「…そう。君の名前はというのかい。」


 「……君は今夜の星についてどう思うんだい?ハグリッドは星に興味がないから私たちの言うことがわからない。」


 「そうだな……ケンタウルスの世界のことはよくわからないけれど……星見の世界では未来は変えられるという定義があるんだ。」


 少し眠たげなは、俺に寄りかかりながらそういった。

 ケンタウルスは背が高いから見上げなくちゃいけないらしくて、首が疲れるらしい。

 俺はその場に伏せていた。

 だって眠い。

 今頃とニトは部屋で熟睡しているだろうに、どうしてこんなところに……


 「そう、変えられる。結局運命を選ぶのはひとりひとりの意思だからね。過去は変えてはいけないものになるかもしれないけれど…未来は自分の手で変えられる。」


 クスクスが微笑んでいた。


 「…だから、僕は未来の予言を忠告と解釈しているけど…」


 黒髪のベインがつかつかとの前に歩いてきた。


 そのときだったか、俺の耳が遠くの叫び声を聞いたのは。

 耳をぴくぴくと動かした。

 にも、ケンタウルスにも聞こえたのだろう、の顔が少し青ざめているのがわかった。


 「…ドラコの悲鳴だ。何か…あった。」


 ロナンがの前に出てきて、身をかがめた。


 「乗りなさい。何が起きたのか確かめに行かなくてはならない。」


 「…ロナン!人をその背に乗せるなんて、君はロバなのか?」


 「…ベイン。この子は普通のことは違う。わかるだろう、君にも。誇り高きケンタウルスが背に乗せても恥じない子供だよ。」


 「…………確かに………」


 ベインは少し納得のいかない表情だったけれど、それでもそれ以上何かを言うのをやめて走り出した。

 声のするほうへ。

 続いてロナン。

 それから俺。



 ……追いつけない。

 やばい。

 速い。




 ケンタウルスは足が速かった。

 普通に地面を走っていたら見失ってしまう……

 しょうがないから俺は地を強くけって浮き上がった。そしてロナンの隣をかける。



 「やあ、。やっと追いついたのかい?」


 の笑顔が…ちょっとむかついた。

 でも、ま、だから。



















































 とりあえず、結構がんばって走ったら、平地に出た。

 木の茂みを破るように走ってきたものだから、息が荒い。

 だけ、しっかりしがみついていただけだから涼しげな表情をしてた。




 ちょっと息を整えてから、周りをよく見たら、もう一匹のケンタウルスの背に乗ったハリーが見えた。



 「フィレンツェ!」


 ベインが怒鳴った。


 「なんということを…人間を背中に乗せるなど、恥ずかしくないのですか?君はただのロバなのか?」


 ベインの声は荒々しかった。

 さっき、ロナンがを背に乗せたときよりも大きな声を出して、俺の耳に響いた。


 はロナンの背から降りようとしたけれど、ロナンが降りなくていいとささやいていた。


 「ハリー、無事だったんだね。よかった。ドラコもその辺にいるね。」


 「!よかった。僕…見たんだ、あの、その……」


 「うん、何が起きたのか察しはつくよ。大丈夫だ。」


 何のことについて言ってるのか、俺にはわからなかった。

 まあ、後で話してくれるだろうと思ったから何も言わなかった。


 宙に浮いていることに疲れたから地に下りた。

 そしたら、ベインとフィレンツェがけんかをしていて怖かった。

 俺も獅子としては大きいほうだけど、ケンタウルスにはかなわない。きっと踏まれたらぺしゃんこになるだろうな…とか考えていた。


 「ベイン、僕はこの森に忍び寄るものに立ち向かう。そう、必要とあらば人間とも手を組む。」


 フィレンツェがさっと向きを変えて俺たちを残して木立の中に飛び込んでいった。


 おいてかれた。


 「…。あなたはどう思うのですか?」


 まだ怒った表情のベインがに聞いた。


 「…ねぇ、ベイン。星の輝きを見てごらん。少し変わっただろう。これが運命は変えられるということさ。」


 は微笑んでいた。

 それからロナンの背から降りて俺の体を優しくなでた。


 「僕もそろそろハグリッドのところに行かないと、怒られそうだ。」


 なんて笑顔でそういった。


 「「送っていきます。」」


 ベインとロナンがそういったけれど、は微笑んで断った。


 「ありがとう。でも、あなたたちにはすべきことがある…」


 「………」


 「では…また来てください。規則を破るのをあまりよいことだとは思わないけれど、あなたとはもっと深く話がしたい。」


 「必ず、また来ますよ。」


 微笑んで手を振って、は俺の背に乗ってフィレンツェのあとを追っていった。


 疲れていたけれど、がゆっくりでいいよ、と声をかけてくれたのがうれしくて、俺はしっかり走った。






















































 「…よかった、無事で。」


 ハーマイオニーが声をかけた。

 みんな集まった。
 
 ネビルは泣きじゃくっていたし、マルフォイはがたがた震えていたけれども、みんな。

 無事だった。

 一番心配していたハリーも無事だった。



 「や、みんな。」


 「!僕さ…」


 「ハリー、話したいことがあるのはわかるけど、とりあえず戻ろうよ。ね、ハグリッド。これで彼らの罰則は終わりだろう?」


 「ああ。そうさな…」



 は震えるマルフォイに笑いながら声をかけて、意地悪くやってきたフィルチの後ろについて寮に戻っていった。

 空が少し明るくなっていた。


















































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 ケンタウルスと心が通じる(爆)
 ケンタウルスの背中に乗るってどんな気分なんだろうなぁ…
 一度乗ってみたい。







































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