あの事件以来、ハリーたちも俺たちも校則を破ることなく二ヶ月が過ぎた。

 ハリーは最年少シーカーとしてグリフィンドール寮のクディッチチームに所属。

 週三回の練習に大量の宿題で、ものすごく忙しそうだった。




 授業のほうも随分と内容が進んできて、面白くなってきたところだった。

 相変わらず、も予習復習は欠かさないから、成績はトップクラスだった。

 特には、魔法薬学の成績がよかった。


















































 『…狂ったときが…手を出した。気をつけろ。次に散りゆくのは可憐な花だ。…運命か空想か…散りゆく者は何が起こっているのかさえ知らないままで……』





















 今日は普段と違った目覚めだった。

 夢を見た僕が目を覚ますと、パンプキンパイを焼くいいにおいがした。

 の鼻がぴくぴくと動いていた。おかげでひげが頬に当たってくすぐったかった。



 少しに気になる夢で、早めに目覚めた僕は朝食の前に机に向かって座り、水晶玉を取り出した。

 水晶玉をもらってから二ヶ月以上もたって、日に日に僕はお告げを聞くことが多くなったし、水晶玉を使用することが多くなった。


 杖で軽く触れる。

 水晶玉の中にはその時々によっていろいろなものが浮かび上がってくる。

 夢のお告げがあった日は僕の気持ちが、そのお告げに向いているのでお告げの内容が現れる。


 ほら…ね。

 映っているのは白い羽が空を飛んでいるところ。

 そして…散りゆくは気の強そうなりんとした花。

 …何か起こる。

 最悪の結果になりえる何かが起こる。





















 「…………痛い。」


 俺が目覚めたのはの声とパンプキンパイが焼けるいいにおいでだった。

 俺は夢の中でパンプキンパイを食べていたのだが、勢いあまって足を噛んでしまったらしい。

 おまけに俺の体はベッドから転がり落ちているではないか。…ああ、恥ずかしい。


 「、僕の足をパンプキンパイと間違えたの?」


 …はい、そのとおりです……


 けらけら笑いながら、は俺のぐしゃぐしゃになった鬣や体毛をきれいにブラッシングしてくれた。

 その間、の足に俺の歯形が残ってしまったので、そこをぺろぺろなめてやったら、くすぐったいって言われた。



 「……おはよ、。」


 「おはよう、に、ニト。」


 少し遅れてとニトも起きた。

 は大きなあくびをしながら服を着替えると、の水晶玉に目を向けた。


 「また、なんか予言でもあったのか?」


 「あ、うん。今日はハロウィーンだしね。」


 「…へぇ……」


 食事に行こう。って、言ってと連れ立って食堂に向かった。

 俺はちゃっかり俺の背中の上に乗ってもう一度寝る体制に入っているニトを起こさないように二人の後ろについていった。


















 今日は何もかもが上手くいく日だった。

 妖精の授業では、がそろって、羽を空中に浮かせたし、そのほかの授業でもスリザリンが減点されることもなくこのまま何事もなく一日が終わるんだと思ってた。

 だけど……



 次の授業に行くんで、妖精の魔法の教室を通り過ぎたときに、はハーマイオニーとぶつかってしまった。

 ハーマイオニーは前を見てなかったらしくて、抱えてた教科書を全部落としてしまった。

 はいまだに露骨にいやな顔をしていたし、教科書を手伝おうとする引っ張って教室に連れて行こうとしてた。


 「あ、。先に行っててよ。もし僕が授業が始まるまでに教室に着かなかったら、ごまかしといて。


 「……ああ。」


 ふてくされた顔をして、はひとりで教場に向かった。

 はハーマイオニーが落とした本(なんと十冊も!)を拾って渡してあげた。


 「…ハーマイオニー、どうかした?」


 ハーマイオニーの顔に涙があふれているのが俺からみてもわかった。


 「………私……………いえ、なんでもないわ。ぶつかっちゃってごめんなさい。私次の授業あるから……」


 無理に笑顔を作っている気がした。


 「…ハーマイオニー……君は一人じゃないよ?」


 「……ありがとう……」


 が何か話しかけていたけれど、俺にはその真意はわからなかった。…とりあえず、励ましてたのかな??



 結局は次の授業に間に合ったし、その授業も何の問題もなく終わった。


















 大広間はハロウィーンの飾り付けでいっぱいで、生徒たちも大はしゃぎだった。

 夕食の時間になったらとつぜん金色の皿に乗ったご馳走が現れた。


 ただ、はほんの少し手をつけただけで、少し緊張していた。


 「……ハーマイオニーがいないんだ、。……何か起こるよ。きっと。散りゆく可憐な花って……」


 突然、扉が勢いよく開き、クィレル先生が全速力で部屋に駆け込んできた。

 服は着崩れているし、ターバンはゆがんでいるし、おまけに顔は恐怖で真っ青。

 いくら鈍いネビルでもなにかただならぬことが起きていることは容易に想像ができただろう。



 の顔は……引きつっていた。

 きっと、予想していたことが起きたのだろう。俺は詳しいことは聞いていなかったけれど、の顔を見れば最悪の事態になりうることだってわかった。


 「トロールが……地下室に……お知らせしなくてはと思って。」


 その場でばったりと倒れた教師に、混乱する大広間の生徒たち。

 それをひげの長い老人が静かにさせた。……すごいじいちゃんだなぁ……


 「監督生よ、すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮に帰るように。」


 低い声が響いて、それぞれの寮の監督生が、あわただしく生徒を連れて行くのが見えた。



 「…、抜け出すよ。」



 はスリザリン寮に行く生徒の最後尾に並んで、途中で道を横にそれて抜け出した。

 …いったい何がしたいんだろう?

 なんとなくをみたら、は女子トイレのほうを観ていた。


 「…どっちに行ったらいいと思う?女子トイレと…スネイプ教授を追いかけるのと。」


 「何やってるんだ?」


 ひっ、っていってが振り返ったら、そこにはが立っていた。


 「なんだ、か。脅かさないでよ。」


 「寮にもどれって言われたのにがほかのところへ行くから気になったんだよ。」


 「…実はね……」


 が話し始めると、は少し戸惑った顔をしていた。













 「…じゃあ、僕がスネイプ教授のほうを見に行くよ。」


 「ありがとう。じゃあ僕はハーマイオニーを助けに行くから。」


 軽く手を合わせた二人はそれぞれ別の方向に走っていった。

 は四階に。俺とはすぐそこの女子トイレに向かって。



























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 はイツキにはやさしいのです。だから、手伝ってあげる(爆)
 の星見の能力も、日に日にましているから大変そうですね。
 そのうち、楽しいことがおこりますよ(爆)










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